Lenovoグループの重要拠点「NECパーソナルコンピュータ米沢事業所」に潜入 実はモバイルWS最上位モデル「ThinkPad P1」の開発を担っていた(1/4 ページ)
NECパーソナルコンピュータ(NECPC)が、報道関係者を対象に米沢事業所(山形県米沢市)の見学ツアーを開催した。この記事では、その内容をかいつまんでお伝えする。
NECブランドのPCを開発/製造/販売しているNECパーソナルコンピュータ(NECPC)は10月24日、報道関係者を対象に同社の米沢事業場(山形県米沢市)の見学ツアーを開催した。
NECPCは、PCの市場シェアでグローバル1位のLenovo Group(Lenovo)の傘下にあるPCメーカーだ。1980〜90年代にかけて日本のPC市場を席巻した「PC-9801シリーズ」の系譜を受け継ぐ個人向けPC「LAVIE」や、法人/個人事業主向けPC「VersaPro」「Mate」を手掛けている。
米沢事業場は同社製PCの製造/開発/品質保証/サービスを担う重要拠点で、同じくLenovo傘下にあるレノボ・ジャパンのPC(ThinkPad/ThinkCentre)の製造と、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズのサーバ機器のキッティングなども担っている。
Lenovoから見た米沢事業所の重要性
ツアーの冒頭であいさつに立ったレノボ・エンタープライズ・ソリューションズの張磊(チョウ・ライ)社長は、日本におけるLenovoの成り立ちと事業の概要、そしてLenovoにおける米沢事業所の位置付けを説明した。
Lenovoのルーツは、中国を中心に展開していた「Legend」というPCメーカーにある。2005年にIBMのPC部門を買収したことをきっかけに、LenovoはグローバルなPCメーカーとなった。
現在、Lenovoは香港に登記上の本店、米ノースカロライナ州のラーレイを日米欧のPC事業を統括する本社、中国の北京に中国事業を統括する本社を構えている。日中米欧にまたがってビジネスを行う、中国資本のグローバル企業となった。
日本では2005年、日本アイ・ビー・エムのPC事業を分社する形で日本法人のレノボ・ジャパンが発足し、旧IBM由来の「ThinkPad」「ThinkCentre」を始めとするPCを販売してきた。
2011年、LenovoはNEC(日本電気)からPC事業を譲り受け、LenovoとNECの合弁事業(ジョイントベンチャー)として経営することになった。これに伴い、両者は中間持株会社として「Lenovo NEC Holdings」を設立し、レノボ・ジャパンとNECPC(※1)はLenovo NEC Holdingsの子会社となった。
(※1)NECPCは、合弁事業の開始に伴い「NECパーソナルプロダクツ」(NEC子会社)からPC関連事業を分社する形で発足した
その後、レノボ・ジャパンとNECPCは本社を同じ場所に移転するなど、組織的な統合が進んだが、現在も「NECブランドのPCを販売するNECPC」と「LenovoブランドのPCを販売するレノボ・ジャパン」という形で別企業として併存している。
日本におけるLenovoグループは、他にもスマートフォン端末事業を展開するモトローラ・モビリティ・ジャパン、富士通と東芝の携帯電話事業をルーツとするFCNT、富士通および日本政策投資銀行との合弁企業である富士通クライアントコンピューティング(FCCL)、そして張氏が率いるレノボ・エンタープライズ・ソリューションズがある。
レノボ・エンタープライズ・ソリューションズは、Lenovoが2014年にIBMからPCベースのサーバ事業を買収したことに伴い発足した。x86ベースのサーバ、AI(人工知能)の処理に用いるGPUサーバやエンタープライズ向けのネットワーク機器をデータセンター事業者/ハイパースケーラーや大企業などに販売している。
張氏は「NECレノボ・ジャパングループとして、国内に複数の拠点を持っている。その中でも重要なのは、グローバルなThinkPadの開発を行っている横浜市にある(レノボ・ジャパンの)「大和研究所」(横浜市西区)、サービス拠点となっている(NECPCの)「群馬事業場」(群馬県太田市)、そしてPCの開発/製造を行っているここ米沢事業場だ。米沢事業所ではNECブランドの個人向けPCと法人向けPCの生産、Lenovoブランドの法人向けPCの生産、そしてLenovoブランドのサーバやストレージのキッティングサービスを行っている」と説明した。
NECレノボ・ジャパングループの拠点は全国に22カ所あるが、その中でも重要なのがレノボ・ジャパン/NECPCの本社(東京都千代田区)、レノボ・ジャパンの大和研究所、NECPCの群馬事業場、そしてNECPCの米沢事業場だ
そもそも「キッティングサービス」って何?
キッティングサービスは、PCやサーバなどを納品(設置)先に納める前に行われる検品や各種設定のことだ。
Lenovoのサーバ/ストレージ製品の場合、中国の工場(GPUサーバはハンガリーやメキシコの工場)から日本に納品されてくるという。米沢事業所で行うサーバのキッティングサービスでは、「検品」「内蔵するオプションの導入設定」「ファームウェアの最新版への更新」「ハイパーバイザー(PCでいうところのOS)の導入」までを実施した上で、出荷前の自己診断とエージングテスト(24時間稼働して問題が発生しないかを確認するテスト)などを行い、納品したらすぐに使える状態にして出荷するそうだ。
サーバ/ストレージの納品では、検品やキッティングを納品先で行うケースも珍しくない。ただ、そうすると稼働開始までに3〜4日を要する。しかし、これらのプロセスを米沢事業所で行うことで、稼働までに要する時間を1〜2日に短縮できるという。
ただし、このキッティングサービスを使うと、海外から到着したサーバ類をいったん米沢事業場に運んで、それから納品先に届けることになるため、購入品が届くまでに余計な時間が掛かってしまう。そのため、顧客によっては「こういうサービスは不要だから、とにかく早く納品してほしい」「検品やキッティングは自分で行いたい」とリクエストすることもあるそうで、その場合は顧客の指示する納品先に直接納入することも可能だ。
なお、キッティングサービスを経たサーバ/ストレージ製品には、外装箱に「米沢工場 検査製品」というシールが貼られることになっている。これにより、「顧客の元に着いた時に日本で検品を受けたことがすぐに分かるようにしている」(張氏)という。
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