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現場に聞く PFUのイメージスキャナーならではの強みが生まれる理由短期集中連載 その3(2/2 ページ)

さまざまなスキャナー製品を提供しているPFUだが、SoCの開発に始まりハードやソフトまでこだわりが満載だという。その実態を聞いた。

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独自SoCも開発し開発手法にもこだわり

 一方、次世代SoCと位置づける「iiGA」(イーガ)も特徴の1つだ。

 同社が12年ぶりに刷新したSoCで、最新のScanSnap iX2500に採用しており、高速スキャンおよび高速起動を実現すると共に、省電力化も果たす。iX2500では大型タッチパネルを通じたスマホのような操作性や、無線LANのWi-Fi 6(WPA3/TLS 1.3対応)のサポートなどを実現している。

PFU うのけ 石川県 かほく市 宇野気 パナソニック ファコム ユーザック HHKB
12年ぶりに刷新した独自SoCの「iiGA」

 「スキャナーを開発するのに、SoCの企画からスタートするメーカーは他にはない。当社の祖業は、コンピュータメーカーであり、そのDNAが流れている。だからこそ、自前でSoCを開発することにもこだわる」(PFUの轡田さん)とする。

 ちなみに、iiGAの名称は「いい画質を実現する」という意味を持たせると同時に、石川県で「いい感じにやって」の意味で使われる「いいがにして」を語源にしているとのことだ。

 さらに、独自のスキャナードライバである「PaperStream IP」により、自動で最適な画像処理を実現し、不要な地紋やノイズを除去したり、文字の太さや濃さを補正したりすることができる。

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独自開発のドライバ「PaperStream IP」により、自動で最適な画像処理を行ってくれる

 また、並べた複数の名刺を一度にスキャンした場合でも、名刺ごとに切り出して保管することが可能な「マルチクロップ機能」も特徴だ。加えて、ScanSnap Cloudにより、スキャンした文書/名刺/領収書/写真を自動的に分類し、クラウドサービスに振り分けて保存も行える。これにより、読み取り作業を行う前の仕分け作業や、読み取り後の整理にかかる手間を省くことができる。

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原稿や名刺などサイズに応じて自動でクロップする「マルチクロップ機能」も重宝する

 これらのハードウェアおよびソフトウェアの製品開発の手法は、同社に蓄積された長年のノウハウによって構築されている。

 例えばハードウェアの開発においては、現物を作り上げる前にシミュレーションだけでかなりのところまで追い込むことができているという。

 轡田さんは「論理を積み上げてシミュレーションを行い、テストフェーズで詰めていくという手法を採用している。紙送りを始めとして紙の挙動に関するデータを数値化しており、これが当社ならではの大きなノウハウになっている。モデルとパラメーターを組み合わせて、さまざまな種類の紙を、正確に安心して搬送するというアナログの動作を、いろいろな形でシミュレーションするノウハウがある。これだけのノウハウを蓄積しているメーカーは他にない」と断言する。

 PFUでは、顧客から得た要望や情報を元に製品開発を進めている。

 スキャナーの販売は全世界の販売パートナーを通じたものになっているが、サポートは同社が直接対応しており、サポートセンタに集約した情報は開発部門にフィードバックするだけでなく、トラブル発生時には製品に精通したエンジニアが現場へ駆けつけて迅速に対応し、そこで得られた情報を開発部門と共有する。

 他にも、Amazonのレビューを始めとした顧客から得られた声を分析し、そこから新たなニーズや改善に対する仮説を立て、企画/開発/営業部門の3つが1組となって世界中の現場を訪問し、情報や仮説の検証を行い、その成果を次期製品の開発に反映することも行っている。

 昨今では、蓄積した情報をAIによって分析するといったことにも取り組んでいる。

 どんな場所で、どのような使われ方をしているのかといった現場を見て、それをベースに製品につなげるのが同社の開発手法であり、その繰り返しが40年間に渡って続けられてきた。PFUの強みの源泉はここにあるといっていい。

PFU うのけ 石川県 かほく市 宇野気 パナソニック ファコム ユーザック HHKB
各地の工場と密に連携して、“日本の品質”を世界に届ける

 現在、イメージスキャナー市場は一定数の需要で推移はしているものの、緩やかな減少傾向にあるのは確かだ。

 しかし、アナログの情報資産をデジタル化するといったニーズは健在であり、AI時代の到来と共にデータ化が重視され、スキャナーの存在価値を高めることもできるだろう。

 轡田さんは「企業の中には、紙で蓄積された『秘伝のたれ』とも称される情報が大量に蓄積されており、これをデジタル化して構造化、活用するといったことが、AI時代において重要視されている。当社では小型機から大型機までラインアップがそろっており、それをグローバルに展開している。今後は、国ごとの事情の違いを捉えながら、最小のポートフォリオで、最大の価値を出すことを目指す」とする。

 次回は、製品の品質を支える試験設備を見ていく。

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