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ロジの最高峰マウス「MX MASTER 4」のユーザー体験にみる完成度と伸びしろ 高みに達したジレンマあり?(3/3 ページ)

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Actions Ringはユーザーの発想次第

 もう1つ、Actions Ringも大きくアピールされているMX MASTER 4の新機能だ。実際にはLogi Options+の機能なので、MX MASTER 4だけでなく、MX MASTER 3/3Sでも利用できる。

 Actions Ringに割り当てたボタン(デフォルトでは触覚フィードバックセンスパネル)を押すとマウスカーソルの周囲にリング状のメニューが表示され、わずかな移動距離で利用したい機能にアクセスできる。これによって作業時間を最大33%、カーソル移動は最大63%も削減可能になるという。

 Actions Ringは周囲に最大8つのメニューアイコンを表示できるが、メニューとしてフォルダーを設定し、2階層目に最大9つのメニューを置くこともできる。メニューは主に位置とアイコンで判断することになるためか、あらかじめ豊富なアイコンが用意されている。

 デフォルトだけでなくマーケットプレースでも追加アイコンを入手可能だが、今なら生成AIで作ることも容易だろう。このメニュー設定はプロファイルと呼ばれ、アクティブなアプリケーションによって自動的に切り替わるアプリケーション別プロファイルと、それ以外のジェネラルプロファイルがある。それぞれ複数作成することができ、Actions Ringアクションの「スイッチ プロファイル」で切り替えることが可能だ。

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Actions Ringではカーソルの周囲に8つ、2階層目に9つまでのメニューが配置できる
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アイコンはマーケットプレースでも入手できる

 設定できるアクションはシステムカテゴリーとActions Ringカテゴリーの他はプラグインによるものだ。

 プラグインが提供されているアプリについてはさまざまなアクションがプリセットとして用意されているが、そうでないアプリの場合は基本的にキーボードショートカットを用いるか、マルチアクション(マクロ)でキーボード操作によるマクロを作成することになる。

 そのため、キーボード操作のみで完結しない操作、例えばGoogle Chromeの「サイトをミュート」はタブの上で右クリックメニューから選択する操作なので設定できない。

 また、物理的なボタンやジェスチャーに同様のアクションを設定することもできるので、Actions Ringの位置付けとしてはマウス操作だけでできる操作のバリエーションを増やすもの、ショートカットキーとマウスでのメニュー操作の中間に位置するものという印象だ。

 物理的なボタンは個数が限られるし、ジェスチャーも上下/左右とクリックの5つ、そしてこれらは画面にナビゲーションが出ないため、操作を覚えておく必要がある。

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Logi Action SDKのドキュメント。プラグインではショートカットだけでなく、専用APIを用いるアクションを定義できる

 それに対してActions Ringはメニュー選択のためにマウスカーソルを大きく移動させる必要もなく、かつ、どのメニューが何をするのかを覚えておく必要もない。実質的にはショートカットキーやマクロの代替であったとしても、確実にニーズのあるレイヤーだろう。

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システムアクションは豊富に用意されている
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ボタンに設定できるアクションと重複するものが多い

 プラグインが提供されているアプリケーションは原稿執筆時点で40種類ある。クリエイティブ系が多く、オフィス系や開発系は少ないようだ。これはMX MASTER 4の想定ユーザー層とも関係しているのかもしれない。

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プラグイン・マーケットプレースには原稿執筆時点で40種類のアプリケーション用プラグインが登録されている
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Photoshop用プラグインは非常に豊富なアクションが用意されている

着実なイノベーションと道半ばなレボリューション

 MX MASTER 3/3SからMX MASTER 4のハードウェア的な進化はハプティック機能を除けばそれほど大きくはない。

 それを裏付けるようにファーストインプレッションの記事を書いた時点で、同社から提供されていた資料にはスペックに関する情報が少なく、DPIや搭載センサーすら情報がなかった。実際のところは最大8000DPI対応のDarkfieldセンサーで、これは前モデルから変更がない。MX MASTERの象徴ともいえるMagSpeed電磁気ホイールについても同様だ。

 これはハードウェアがMX MASTER 3/3Sの時点で既にかなり完成されていることが理由として挙げられるだろう。だからこそ、消費者としては「いったいMX MASTER 4でなにをかなえてくれるのだろうか」と、未知なる期待を抱いていたのではないだろうか。そして、その答えとしてロジクールが出したものがハプティック機能であり、Actions Ringだった。いくらMX MASTERの完成度が高いとはいえ、新製品である以上はそういったものがなければ2万円(同社直販価格で2万1890円)を超える価格の納得感も小さくなってしまうだろう。

 とはいえ本稿でも触れた通り、ハプティック機能は(筆者が勝手に)期待したような革新的なものではなく、「押されたことや選択したことが振動で分かりますよ」というものに過ぎなかった。

 触覚フィードバックとはそういうものだ、と言われればその通りなのだが、ハード的なポテンシャルを持て余しているようにも感じる。

 Actions RingについてはMX MASTER 3/3Sでも利用可能になっており、そこにMX MASTER 4の優位性はない。MX MASTER 4のセールスのためにMX MASTER 3/3Sで利用不可、としなかったのはロジクールの誠実さが見えるところだが、それをMX MASTER 4の新機能と表現することについては、やや疑問を感じなくもない。

 だが、そこにはMX MASTERというよりはマウスそのものとしての極み、想像しうる究極のマウスに前モデルで到達してしまったトップランナーのジレンマを感じる。

 これから先、MX MASTERシリーズはハードウェアの革新的な進化は難しいかもしれない。だからこそ、マウスというインタフェースの再定義を図り、さらなる伸び代を作ろうとしているようにも感じる。それがカスタム可能な多ボタン、ジェスチャー、そしてActions Ringといった多層に渡る操作のショートカットではないだろうか。

 ただ、そのようなインタフェースの最適解はアプリやユーザーによって異なる。ユーザーの立場としてはなるべく簡単に導入し、そして自分なりに調整をしたいところだろうが、現在のロジ・マーケットプレースで公開されているプラグインはまだまだ少ない。ただし、最近はα版だがNode.js用SDKが公開されており、ユーザー参入のハードルがかなり下がることが期待される。それと合わせてユーザーの作成したアプリケーションごとのプロファイルもマーケットプレースで配布できるようになれば、もっとActions Ringも活用できるのではないだろうか。

 そのようなユーザーを巻き込んだコミュニティーが、今後のMX MASTERシリーズのレボリューションの鍵かもしれない。

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Logi Actions SDK for Node.jsを使えば、Node.jsでのプラグイン開発が可能だ
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SDKでは3カテゴリーに分類されたハプティックパターンを15種利用できる

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