IT仕事塾

ファイルメーカーPro ユーザーの現場を探る
第10回 松下電器のカタログ画像を管理するシステムの構築

「ファイルメーカーProユーザーの現場を探る」の第10回目は、松下電器産業のNational、Panasonicという2大ブランドのカタログを収録した画像データベースの構築例です。10万個という膨大なファイルを扱うデータベースは、ファイルメーカーProで動いているのです。

 松下電器産業の総務関係の部門が独立して設立された会社が、松下ビジネスサービスです。そして同社でNational、Panasonicブランドの商品カタログの企画・制作・印刷を担当しているのが、その中のメディア制作ビジネスユニット販促助成グループ。ファイルメーカーProはここで1年間に5000ページ以上制作されるカタログ管理のデータベースとして稼働しています。同社の有馬哲也さんに、このシステムについてお聞きしました。


松下ビジネスサービスの有馬さん。実は1978年にApple IIを購入して以来という筋金入りのAppleユーザー

 このグループの前身が松下電器の中に生まれたのは1995年のこと。カタログの制作を自社内で行うことを意図して立ち上がりました。それまでは、松下電器の各事業部の助成物担当の人が個々の制作会社にカタログや販促物を依頼し、出来上がった版下の印刷をさらに別の印刷会社に手配していたのです。

 しかし、急速なデジタル化と二次利用に対する要求、データを内部に保持しておく必要性から、データの制作は外部のデザイン事務所を、総合プロデュース、製版と印刷は内部でという流れに変わりました。最初は制作に深くかかわることもありませんでしたが、次第に、制作を総合プロデュースし、データを内部にためて、次期印刷・二次利用に持っていくための製版データを管理するようになり、登録開始1年を過ぎたころから急速に二次利用が増加しました。

 National、Panasonicブランドのカタログ製版データを集大成した「カタログデータベース」に収録されているファイル数はなんと10万件以上。このデータベースを構築するにあたって気をつけたのは、「冊子のイメージデータをそのまま入れること」です。製版データとして収められたファイルをそのまま収録し、必要なデータがあればそのまま利用できるようにしました。

 データベースの中のイメージは、カタログの冊子そのままです。基本単位は冊子の見開きで、それが何枚か集まって一冊のカタログになります。これらはフォルダ単位で管理されているため、そのデータが置かれているボリュームから該当するファイルをコピーするという直感的なやり方でも操作できる、この方法の持つメリットは大きいというわけです。


カタログ冊子のデータベースは、見開き2ページを基本単位 として表示

 このデータベースに決定するまでに、いろいろなところから提案がありました。その中にはCumulusに代表される、画像専用データベースもありましたが、カタログをフォルダ単位で管理すること、見たとおりの冊子のイメージのままで登録したい、といった要求に応えられるのはファイルメーカーしかなかったと有馬さんは言います。

 「ファイル数が多いので、カタログ製版データの各々のファイルについて、ファイル名、ファイルパス(フルパス)、プレビュー用の画像などを、AppleScriptを使って、ファイル単位ではなくフォルダ単位で、ドラッグ&ドロップでファイルメーカーProに取り込めるようにしているところが、このシステムの特徴です」と 有馬さんは説明します。


「ファイルパス」というフィールドにファイルのフルパスが表示されている

 フォルダの階層構造には、製品種別やカタログ単位、実際に使われている画像ファイル、そして著作権の取り扱いが必要なデータといったものが意味のある名前でつけられており、AppleScriptを使ってファイルのコピーをはじめとするさまざまな作業が可能です。データベースを取り扱う部門ではすべてMac OS Xで統一されているため、シェルプログラミングを組み合わせた処理も可能なので、「Mac OS 9時代では難しかったことも比較的容易にできる」と有馬さん。


カタログデータベースの画像の実体は、このように階層構造化された状態で保存されている


画像データベースはRAIDを接続したPower Mac G4で、Mac OS Xを使って動かしている

 このデータベースは、さらに進化を続けます。このデータベースに東京のオフィスからアクセスできるようにボタンが追加されたのです。実は、大阪ビジネスパークにある画像サーバは、同社の東京オフィスと100Mbpsの回線で直結されており、必要に応じて画像ファイルが取り出せる仕組みになっています。夜間にプレビュー画面の作成と同期作業をバッチ処理で行い、必要なデータがいつでも取り出せる準備をしています。


製版・印刷を担当する関連会社、新日本工業内に画像データベースは置かれている


製版・印刷会社の新日本工業と松下ビジネスサービス(大阪)、松下ビジネスサービス(東京)は高速ネットワークで接続され、カタログデータベースを共有している

 実はこのシステム、シータが開発したTheta ECHOSが使われています。ECHOSはAdobe IllustratorやAdobe InDesignとファイルメーカーProを組み合わせたデータベース・パブリッシング・システムで、画像ファイルを取り扱うのに適したソリューションです。この連載企画で紹介したエヌティ企画も、Theta ECHOSとAdobe Illustratorを組み合わせたデータベース・パブリッシング・システムを運用しています。

 大きな違いは、松下ビジネスサービスのカタログデータベースの場合、既に完成されている製版データを管理するのが目的なので、画像ファイルの管理だけできればよい、という点です。機能のごく一部分を使っているだけですが、それでも製版データを、ほぼ手直しなしでデータベース化できるメリットは大きく、非常に実用的なシステムに仕上がっているのです。

 では、データベースの画面を見てみることにしましょう。


検索画面。目的のカタログを探すための管理番号を入力すれば、一発で検索される


見開き一覧。目的のカタログに全ページの情報が一覧できる


見開きアップ用レイアウト。EPSデータのプレビュー画面をそのまま見せているため、表示は高速。ここで目的の画面かどうかを確認する


見開きの右ページ(実際のカタログをスキャンしたもの)


見開きの左ページ(実際のカタログをスキャンしたもの)


コピーのダイアログ。見開きページの全データが含まれたフォルダをコピーするか聞いてくる


見開きページの中で使われている各種ファイルのデータ一覧


テキスト表示のみのレイアウト

 製品カタログ用データベースを構築するに当たっては、データ制作側の手順も標準化されることになりました。最終的な製版データのフォルダ、ファイル構成、ファイル名の付け方、レイアウト編集用アプリケーション、フォルダ/ファイルのカラー(知的財産権所有物は特別な色を設定してある)、写真データの保存形式(Photoshop EPS、CMYK)といったところまで標準化が図られているため、データベースに登録するときには、品番体系に合わせてフォルダ名、レイアウト編集ファイル名を変更し、EPS保存するくらいですみます。膨大な画像ファイルにはいっさい手を加えません。

 このため、カタログができ上がるとすぐにカタログデータベースに製版データが登録され、その直後から二次利用が可能になるのです。店舗別にカスタマイズされたカタログやウェブ、プレス向け資料など、データの二次利用はこれからますます多くなっていくでしょうし、PDFを使ったオンラインカタログといった用途も自然の流れとして見えてきます。単なる「画像データベース」に終わらない、発展性・接続性を備えたファイルメーカーProベースのシステムは、さらなる飛躍が期待できます。

[松尾公也, ITmedia ]

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