IT仕事塾

ファイルメーカーPro ユーザーの現場を探る
第11回 SOHOスタイルで外部スタッフを多用するデザイン事務所はファイルメーカーで稼働する(2/2)

前のページ

本社を持たないSOHOオフィスで外注管理システムを機能させる

 こうやって、住所録までは無事にオンライン化できたわけですが、SOHOベースの業務を効率化するためには、外注スタッフの進捗管理・経費管理を改善しなければなりません。これまでは、進捗管理は、それぞれのプロジェクトを受け持った担当者がばらばらに行っており、その担当者から送られたメールやFAXをもとに、経理担当者が請求書を作成したりしていました。この部分は完全にオフラインで、経理担当者はもらったデータをExcelに転記し直すという非効率的な作業を行っていたのでした。

 この問題を解決するために作られたのが、「ATMIXT受注台帳」というデータベースです。これは、既に説明した「ATMIXT取引先」「ATMIXTパートナー」とリレーションが張られ、同じようにファイルメーカーServerでホストされています。


BFLETSの固定IPサービスを使い、ファイルメーカー Serverのほか、メールサーバ、ウェブサーバを石神井オフィスにホストし、谷中、浅草オフィスからも社内システムに直接アクセスできるようになっています。外注のデザイナー、イラストレーターを使う場合でも、それぞれのオフィスから外注管理システムにアクセスし、その経過・結果を他のメンバーと共有することができるのです

 では、仕組みを見ていきましょう。


これが詳細画面。案件を一つ一つの要素(担当するグラフィックなど)に分割し、外注に振り分けます。グラフィックのサイズは20×20ミリという小さなものからA3サイズまで多岐にわたります。料金の目安になるのはそのサイズと過去にそのクライアントから受けた仕事からの修正なのかどうか、そしてその作業担当者が、グラフィック作成のどの部分を担当したのかがわかれなければ、最終的な料金は出てきません。一方、クライアントによっては料金の大枠だけが決まっていて、それを作業担当の外注スタッフに落とし込んでいく場合もありますが、その際にもこのシステムで調整することができます


納品するときに使うメールの文面は自動生成されます。この文面でよければ、送付ボタンを押すことで送信終了。文面の変更も、この画面上でワープロ感覚で直接行うことができ、後は送付ボタンを押して送信終了


外注担当別の仕事の履歴が表示されます。これを見れば、現在その担当者がどのような状況にあるのか、仕事を発注してもOKな状態かどうかがわかります

 このシステムで使っている外部アプリケーションはメール処理の部分だけです。ファイルメーカーProはEudoraについてはフル対応しているので、スクリプトだけで処理できますが、ARENA Internet Mailer(すでに販売終了しているMac用メーラーです)の場合はAppleScriptで処理しなければならないので、利用者によって使うスクリプトを変えています。

 SOHOだとお互いの顔が見えないまま共同作業をしていくわけですが、それだけにケアが必要になります。しかし、そこに手をかけすぎると作業に遅れが生じてしまう……。アットミクストでは作業担当者のためのメーリングリスト、作業発注メール、そしてファイルメーカーProベースのシステムで進捗管理をしながら進めています。

 外注スタッフの割り当てについても、スタッフのマシン環境、得意分野が書かれたパートナー管理画面により、適切な仕事に適切なスタッフをアサインすることが可能になっています。

 その後、変化したことといえば、ほとんどのスタッフがブロードバンド環境になり、ファイルメーカー Serverを置いているネットワークも、OCNエコノミーからBフレッツとKDDIのサービス組み合わせによる固定IPサービスに切り替わり、ネットワークに余裕が生まれたことがあります。

 そこで、今後の課題としては、納品データの画像データベース化が検討されています。画像データベースに関しては、このユーザー事例連載でいくつか取り上げられているので、それらを参考にしたいとの意向でした。

 アットミクストのような業態をとった企業は今後、ますます増えてくると思いますが、このようなSOHO企業は、ニッチを狙えば狙うほど、一般的な業務パッケージではおそらくフィットしません。アットミクストでも最初は市販の経理パッケージを使おうとしましたが(なんと、最初は青色申告ソフトを使おうとしていたのです!)、科目がまるで実情に合わなかったり、インタフェースの融通がきかなかったりと、不満だらけでした。

 このシステムの開発者は全くこういったシステムの経験はなかったのですが、ゼロから開発して数カ月で何とか実用レベルまで達しました。その後はほとんどメンテナンスフリーで、たまにユーザーからの要望でボタンを増やしたり、ユーザーインタフェースの改良を行ったりするくらいです。

 これまでは「すごい」実例ばかりをお見せしてきた感がありますが、こういう「普通の、でもカスタマイズされたシステム」は、それこそファイルメーカーProが得意とする分野なのです。

[松尾公也, ITmedia ]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページ | 2/2 | 最初のページ

ピックアップ

news139.jpg 週末アップルPickUp!:絶好調のApp Store、ユーザーに34億円返金へ
アップル関連の話題を何となくまとめる週末アップルPickUp!。今週は未成年者によるアプリ内課金問題を取りあげます。

news020.jpg 24時間動作+4バンドLTE+11ac+SIMフリー(予定):もしかして“無双”? ツウ好みの高性能LTEルータ「AtermMR03LN」をねっとりチェック(パフォーマンス編)
“ツウ好み”の機能や特長を多く備えるLTEルータ「AtermMR03LN」がモバイラーの中で人気だ。前編の機能チェックに続き、後編では実運用して分かった使い勝手とパフォーマンス面をねっとりチェックする。

news041.jpg 最新タブレット速攻レビュー:「MeMO Pad 8」──“Winタブ”よりお手ごろ価格な8型Androidタブレット
8型タブレットとなると最近はWindows 8.1搭載モデルが人気だが、同サイズでAndroidなら“もっと低価格”である。2万円台で買える8型タブレット「ASUS MeMO Pad 8」をチェックする。

news052.jpg 最新PC速攻レビュー:「VAIO Pro 13」――さらにハイスペックを軽快に持ち運べる“14春モデル”徹底検証
高い人気を誇る薄型軽量モバイルノート「VAIO Pro 13」が、より高性能なCPUを搭載可能になった。その実力を確かめるべく、直販ハイスペックモデルをじっくり検証する。

news062.jpg 「3年先を行く」製造技術:タブレット市場に注力するIntelのモバイルプロセッサ戦略
Intelは“他社の3年先を行く”半導体製造技術でタブレット市場における影響力の拡大を目指す。同社のモバイルプロセッサ戦略をまとめた。

news116.jpg LaVie Z&LaVie G タイプZロードテスト:第23回 2560×1440解像度スゴイ……格段に作業効率が上がる「超高解像度ディスプレイ」
ウルトラ軽量に加え、「超高解像度ディスプレイ」もLaVie Z(IGZOモデル)の魅力だ。今回はこのディスプレイの使い勝手と応用方法を考えてみた。

news107.jpg SOHO/中小企業に効く「ビジネスPC」の選び方(2):Windows XPから乗り換えるべきは“7”か“8.1”か
Windows XPのサポート終了に際して、どのようなPC環境に移行すべきか? まずはWindows 7か、Windows 8/8.1か、次のメインOSを選択する必要がある。

news057.jpg NUCやUltrabookをもっと速く:アキバで人気のSSDにmSATA版が登場――「Samsung SSD 840 EVO mSATA」徹底検証
抜群のコストパフォーマンスで高い人気を誇るSSD「Samsung SSD 840 EVO」にmSATA版が登場した。容量が1Tバイトまで用意されているのも興味深い。早速、性能をチェックしよう。

news033.jpg SOHO/中小企業に効く「UPS」の選び方(第2回):「UPS」を正しく選ぶコツ――容量の計算方法は? 給電方式とは?
「無停電電源装置(UPS)」の基礎知識から、機器に合った製品選びまで、順序立てて解説する本連載。第2回は、UPSの選定で知っておくべき、容量の計算方法や給電方法の違いを紹介する。

news032.jpg 「ThinkPad X240s」ロードテスト:第4回 大きく変わった「5ボタントラックパッド」を快適に使えるようにする、2つのコツ
業務に使うPCとして積極的にThinkPadを選んできた理由の1つに「トラックポイント」がある。今でもノートPCに搭載するポインティングデバイスとして唯一無二の存在だと確信しているが……。