防災訓練に130台のiPhone――現場リポートで活躍
災害時に各地のリアルな情報を伝える手段としてiPhoneを活用――こんな実証実験を明治大学の地域コミュニティシステム研究所が実施した。130台のiPhoneは、災害現場でどんな役割を担うのか。
災害が発生した時、各地の被害状況を集めるルートは限られたものになっているのが現状だ。行政の用意するインフラだけでは各地の細かい情報までは拾いきれず、携帯電話も音声通話は利用の集中でつながりにくくなる上、キャリア側で利用の集中によるネットワーク障害を防ぐための規制を行う場合もある。
さまざまな制限がある被災エリアで、各地の情報をリアルタイムに集める方法はないものか――。明治大学 地域コミュニティシステム研究所が、さまざまな可能性を探る中で選んだのがiPhoneだった。同研究所は1月15日、130台のiPhoneを防災訓練に活用する実証実験を実施。千代田区の防災訓練に参加したボランティアにiPhoneを配布し、各地のリアルな情報を集める手段に利用した。
この実験の背景や実際の効果、今後の課題について、明治大学 地域コミュニティシステム研究所 研究推進員の半田正浩氏に聞いた。
さまざまな訓練の様子をリアルタイムに配信
明治大学 地域コミュニティシステム研究所は、千代田区の防災訓練に参加するにあたって130台のiPhoneを用意。Twitterクライアントの「Echofon for Twitter」やARアプリの「セカイカメラ」、登録ユーザーの位置情報をマップ上に表示する「Friend mapper」、実況中継アプリの「Ustream」など、リアルタイムな情報発信に役立つアプリをプリセットして訓練の参加者に配布した。参加者の内訳は明治大学の学生が約半数で、残りは災害救援ボランティア推進委員会が集めたボランティア。さまざまな世代の人が参加するボランティア向けには事前に講習会を行い、iPhoneやアプリの基本的な操作を説明した。
防災訓練は、徒歩による帰宅の体験やトリアージ訓練、応急給水訓練、救出救助訓練など多岐にわたる。実証実験はiPhoneを持った130人のボランティアがさまざまな訓練に参加し、その様子をTwitterのツイートや写真投稿、Ustreamによる動画中継で伝え、災害本部がそれらの情報を集約してディスプレイに表示するという形で行われた。
ディスプレイにはさまざまな場所の訓練の様子が写真やテキスト、動画で次々と表示され、どこで何が行われ、どんな状況なのかが直感的に分かる。半田氏も「実際の災害でどうなるかは分からないが、訓練では役立つシステムになると感じた。自治体が発信する情報の補完として使えるのではないか」と、手応えを感じている様子だ。
操作性のよさとアプリの豊富さでiPhoneを選択
明治大学 地域コミュニティシステム研究所は、ITを使った地域の活性化を研究しており、今回の実験は「災害時の情報集約のために携帯電話を生かせないか」と、千代田区から持ちかけられたことから始まった。災害時には、避難している学生がボランティアとして活動することも考えられ、その場合には大学側が学生の動向を把握する必要があると半田氏。大学側とボランティアがやりとりする手段を検討する中で、iPhoneを活用する案が浮かんだという。
他のスマートフォンも検討したが、操作性のよさや、すでに災害時に役立ちそうなアプリがたくさんあることからiPhoneを選択。千代田区の防災訓練の経過を見ても、操作になれている学生はもとより、他の世代のボランティアスタッフも何かしらの情報を送っていることが確認できたと話す。
同研究所では、今後も実証実験を重ねて、公共的なサービスにどの程度使えるかの検証を進める考え。この取り組みは「災害時にITツールを使う習慣がない中で評価されている」(半田氏)といい、今後は一般の人が参加できる仕組み作りや、災害時にも安定して稼働するシステムの開発も目指すとしている。
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