ソーシャルな新サービスそろう――ベンチャー支援企画「KDDI ∞ Labo」の第2期チームを見る
KDDIのスタートアップ支援プログラム「KDDI ∞ Labo」の第2期が始まり、参加メンバーらのサービスが紹介された。アプリ情報共有サービスや、クリエイター向け交流プラットフォームなど、ソーシャルなサービスがそろっている。
KDDIのスタートアップ支援プログラム「KDDI ∞ Labo」の第2期が始まる。応募の中から4組の参加チームがこのほど決定し、六本木にあるKDDI ∞ Laboのコミュニケーションスペースで参加者の紹介が行われた。それぞれのチームがどんなサービスを開発しているのか、紹介しよう。
アプリとソーシャルに出会える「Peepapp」
エウレカは、ユーザーがどんなアプリを使っているかを周囲と共有するサービス「Peepapp」のさらなる飛躍を目指し、プログラムに参加する。サービスの目的は、「ユーザーがスマートフォンアプリに出会えるきっかけを作る」(エウレカ 赤坂優氏)ことだ。Peepappでは、気になったユーザーをフォローすることで、そのユーザーがどんなアプリを使っているかが分かるようになる。フォロワー全体のアプリランキングも見られるので、例えばビジネスパーソンを中心にフォローしたユーザーは、そうしたユーザーの間で何が流行っているのか分かる。「有名人が使っているアプリ」や「大学生に流行っているアプリ」など、アプリストアのランキングなどとは違った切り口でアプリに出会えるという。
Android/iOSアプリをすでにリリースしているが、現状ではフォロワーのインストール情報が淡々と流れるだけで面白みがないという。このほかにも、サービスを普及させる上でいくつかの課題があり、同社はKDDI ∞ Laboのプログラム期間を使って、Peepappをリニューアルする。「mikke」という新名称で、サービスを展開していく考えだ。
クラフト系クリエイターのプラットフォーム目指す「Creatty」
Connehitoが開発している「Creatty」は、“モノ”を作るクリエイターが簡単に情報を発信でき、ファンとつながるプラットフォームサービスだ。インターネットには動画サイトやイラスト投稿サイトなど、クリエイターが作品を投稿できる場がいくつもある。しかし、彫刻をはじめとするクラフト系クリエイター向けのサービスは、メジャーなものがないとConnehitoの大湯俊介氏は話す。既存のサービスには、作ったものを写真に納めてPCでアップするわずらわしさや、サイトのデザイン性の低さ、投稿してもユーザーから反応がもらえない、といった課題があるという。
Creattyは、「60秒で自分のギャラリーが作れる」という気軽さが売りの1つ。スマートフォンアプリで写真を撮影したら、すぐに作品を公開できる。ギャラリーはシンプルでモダンなデザインを心がけた。また、作品の製作過程も公開できるようにし、“作品のタイムライン”が作れるのも特徴。製作中にもファンとの交流が生まれ、双方向性のある作品制作ができるという。一般ユーザーはスマートフォンアプリを通じて作品を閲覧し、好きなモノが出てくればそれをコレクションできる。こうして作る人と欲しい人をマッチングさせ、双方が刺激しあう好循環を作っていくことがサービスの狙いという。
KDDI ∞ Laboのプログラムを通じて、4月にPC向けα版を公開し、順次アプリもリリースする。公開後、初月1000人のクリエイター獲得を目指す。
ノートをTwitter感覚で書き、共有できる「U-NOTE」
「デジタルデバイスでノートを取り、それを共有するのが当たり前の文化を作っていきたい」――そう語るのは、U-NOTEの小出悠人氏。同社がテスト運用中のノート共有アプリ「U-NOTE」は、同じ授業を受けているユーザーらが、「リアルタイムに授業をTogetterでまとめる」ようなイメージでノートを共有できる。
ノートの投稿にはTwitterのように文字数制限があり、ユーザーは投稿を繰り返してノートを作っていく。ノートの画面には、授業参加者の投稿を集約したタイムラインが表示され、参考になるものがあれば自分のノートに取り込める。参加者の投稿をリツイート感覚で“リノート”し、自分のノートを補強できるのだ。
よくリノートされるユーザーはその授業の“HERO”になれる、そんなゲーム的な要素も組み込んだ。ノートの価値を可視化することで、ノートを書くことを促進していく狙いがあるという。
4月下旬から、都内の大学20校でサービスを開始する。5月中旬にはiPhoneアプリをリリースする予定だ。
人や自分の“好きなものコレクション”を集約する「スキコレ!」
Team22が開発する「スキコレ!」は、ユーザーがTwitterで発信したさまざまな情報を自動的に収集し、コレクションするサービス。Twitterで投稿した動画や写真などがコレクションにたまっていく。自分が興味を示したコンテンツを後から振り返る、気になるユーザーの好きなものを調べる――そんなシーンで役に立つサービスを目指す。
また、つぶやきの内容を分析して、ユーザーが好みそうな動画や本などをレコメンドするのも、同サービスの大きな特徴だ。ユーザーが自分に合ったコンテンツや商品を簡単に見つけられる場として、活用できるようにしていく。ユーザーの独自のアルゴリズムで分析した“嗜好性データベース”を生かして、広告やECと連携したビジネス展開などを考えているという。
KDDI ∞ Laboに参加しながら対応サービスを広げていく考えで、Twitterに続きFacebookとの連携を実現する予定となっている。
スタートアップに加え、KDDI側からも参加チーム
選ばれた4つのスタートアップに加え、今回はKDDI研究所から1チーム、KDDIから1チームがプログラムに参加する。
KDDI研究所は、同社の音声合成エンジン「N2 TTS」の普及を目指し、スマートフォン向けアプリ「しゃべロボ 19(仮)」を提供する予定だ。N2 TTSは軽量かつ無料で使える日本語対応の音声合成エンジン。Androidアプリを2011年9月に公開し、これまでに1万6000件以上ダウンロードされているという。N2 TTSの活用例として、アニメ風のキャラクターがメールやTwitterを読み上げる「ささやくヤーツ」といったアプリも開発している。KDDI ∞ Laboでは、どうしても人口感が出てしまう合成音声の限界を逆手に取り、“音声合成をロボットボイスから人に近い声に育成していくゲーム”を開発する。こうしたアプローチで幅広いユーザーに音声合成エンジンを知ってもらい、同時にN2 TTSの利用を活性化させようとしている。
KDDIからは7本木チームが参戦する。7本木は、アプリやサービスをKDDI社員自らが通常業務と並行して作るプロジェクトだ。KDDI ∞ Laboの第1期に続く参加で、今回は手描きの絵をつかったコミュニケーションサービス「ドロコミ(仮)」の提供を目指す。アプリ上で絵を描き、それを友人らと共有するようなサービスで、イラストによるしりとりを楽しむといったことができるという。
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