「何としてもauモメンタムの回復を成し遂げたい」――KDDI、スマートフォンへのシフトをより鮮明に
KDDIの2011年3月期の決算は減収増益。今後はスマートフォンへのシフトをより鮮明なものとし、「解約率」「MNP」「純増シェア」「データARPU」の改善を図ることで、連結ベースでの増収増益を目指す。
KDDIが4月25日、2011年3月期の決算を発表した。連結ベースの業績は、売上高が前期比0.2%減の3兆4345億円、営業利益が前期比6.3%増の4719億円で減収増益。KDDI 代表取締役社長の田中孝司氏は、営業利益が当初の見通しの2450億円を上回る結果となったことや、課題となっていた固定通信事業の黒字化を実現したことなどを挙げ、「期待以上の結果だった」と振り返った。
同社の事業を支える移動通信事業は、売上高が前期比2.2%減の2兆5907億円、営業利益が前期比9.3%減の4389億円の減収減益。シンプルコースへの移行に伴う音声ARPUの減少や、新800MHz帯に対応する端末への移行促進に伴う諸経費が売上を圧迫している格好で、「この2年間は厳しい状態」とみる。
しかし一方で、スマートフォンを軸とする戦略に舵を切った効果も現れ始めている。例えば解約率は、日本のトレンド機能を盛り込んだAndroid端末「IS03」を投入した11月下旬以降は低下傾向にあり、スマートフォンユーザーのデータARPUは機種変更前に比べて1600円増加していると田中氏。2011年度は、よりスマートフォンへのシフトを明確なものとし、「何としてもauモメンタムの回復を成し遂げたい」と意気込んだ。具体的には「解約率」「MNP」「純増シェア」「データARPU」という4つの指標について改善に乗り出す方針だ。
同氏によれば、今期リリースする端末の半分以上がスマートフォンになるといい、日本のトレンド機能を盛り込んだ端末に加え、グローバルモデルやWiMAX対応端末もラインアップを拡充するという。auらしい魅力のあるサービスを合わせて提供することにより、通期で400万台の販売を目指し(2010年度は109万台)、解約率は2010年度の0.73%から0.7%まで低減させ、データARPUは2320円(2010年度)から2540円まで引き上げたいとした。
2011年度の見通しについては、連結ベースで増収増益を目指すとし、営業利益は0.7%増の4750億円を想定。移動通信で4300億円、固定通信で400億円を見込む。スマートフォンの販売台数は、総販売台数の33%にあたる400万台を目指す考えだ。
3M戦略でKDDIの強みを最大化
新年度のスタートに伴い、田中氏は持続的な成長を続けるための新たなビジネスモデルに言及。スマートデバイスの急成長といった事業環境の変化や、内需の低迷、グローバル化の加速といった社会環境の変化に対応すべく、国内事業の成長戦略として「3M戦略」、海外事業の拡張に向けた「グローバル戦略」を策定したことを明らかにした。「この変化は新たな事業機会の到来でもあり、これをチャンスととらえてさらなる成長を目指す」(田中氏)
3M戦略は「マルチユース、マルチネットワーク、マルチデバイス」の頭文字をとったもので、さまざまなコンテンツやサービスを、最適なネットワークと端末で利用できる環境を整備する取り組み。スマートデバイス時代に急増するデータトラフィックを、KDDIが持つ3GやWiMAXのモバイル網、固定網といった複数のネットワークに収容することで、高速で快適な回線の提供を目指す。キャリア側としても、ビット単価の高い3Gのみに依存することなく、高速で安価なWiMAXでカバーしたり、FTTHやWiMAXをWi-Fiのバックホールとして共有化したりすることで運用コストを大幅に低減でき、これを固定網とモバイル網を1社で持つKDDIならではの強みとして生かしていく考えだ。
グローバル戦略は、これまでホールセールやデータセンター、海外SI、ネットワークなどの事業間のシナジーを高めることで事業の成長を図ってきたが、新たに日本で展開しているインターネット事業やWiMAX事業、コンテンツ事業などのノウハウを活用し、新興国とアジアでコンシューマービジネスを展開する計画。2015年度には2010年度末の倍にあたる3200億円の売上を目指すとしている。
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