IS03「大変好調」――2011年度にデータと音声のARPU反転と田中社長
KDDIが第3四半期決算を発表。音声ARPU減などにより減収減益となったが、田中氏はスマートフォンの好調をアピールし、2011年度にはデータARPUが音声ARPUを上回るとの見方を示した。
「IS03の販売は大変好調」――KDDIは1月24日、2011年3月期の第3四半期(9月〜12月)決算を発表した。決算会見では、2010年12月1日に小野寺正氏から社長のバトンを引き継いだ田中孝司氏がAndroid端末「IS03」の好調を説明し、スマートフォンへの注力姿勢をアピールした。
連結ベースの第1〜3四半期は、売上高が前年同期比0.5%減の2兆5719億円、経常利益が3.6%減の3497億円、純利益が4.7%減の2026億円で、減収減益となった。
移動体通信事業は、売上高が2.5%減の1兆9523億円、経常利益が14.6%減の3531億円、純利益が17.8%減の2035億円となった。携帯電話の月額利用料金が安くなるシンプルコースへの移行が進み、音声ARPU(利用者あたりの月間利用料の平均)の減少が続いていることが減収の主な要因。利益面では、新800MHz帯に対応したトライバンド端末への移行促進によって端末販売台数が増えるなど、営業費用の増加が影響し、減益となった。
IS03は「大変好調」
シンプルコースの契約率は2010年12月末で62%で、今後もシンプルコース移行に伴う音声ARPU減は続くことが予想される。その一方で期待されるのが、データARPUの上昇だ。前社長の小野寺氏がライト層のデータ通信利用促進が必要としたのに対し、田中氏はスマートフォンがデータARPUの上昇に貢献するとの見方を示した。
同社は2010年11月26日にAndroid端末「IS03」を発売。おサイフケータイやワンセグといった日本のケータイの定番機能を盛り込んだ“1台目需要に応える端末”として売り出し、「販売面では大変好調に推移している」(田中氏)という。
スマートフォンによるデータARPU拡大の鍵となるのは、パケット定額サービスの利用だ。12月末までの集計を元にすると、IS03購入者の86%が、IS03発売に合わせて用意されたフラット型のパケット定額サービス「ISフラット」を選択している。また、購入者の12月のデータARPUは、購入前(10月)と比較して約40%上昇した。これにより、購入者の毎月割の適用やシンプルコースへの移行による音声ARPU減少の影響が緩和されているという。
IS03に関しては、購入者の約3分の2が20代と30代、さらに男女比が7対3という結果も出た。「新しいデジタル機器では男性ユーザーが圧倒的に多くなる傾向にある中、IS03は女性にも支持されている」(田中氏)。購入者の92%は機種変更のユーザーだが、これは既存ユーザーからの予約が殺到したために新規ユーザーのための在庫がなくなったためとし、今後は在庫の安定とともに新規の購入者も増え、純増に貢献していくと田中氏は説明した。
また、同社の運営するAndroid端末向けアプリマーケット「au one Market」の好調についても語られた。同マーケットでは、3月末までに1800アプリをラインアップする当初の計画を上回り、12月末で1814アプリを達成。IS03ユーザーの約8割がau one Marketで必要な「au one-ID」を取得し、3割がアプリ「Skype au」をダウンロード、4分の1が「jibe」の会員登録を行うなど、同社の予想を上回る利用率になっているとした。
ARPU反転は「来年度」 CDMA2000版iPhoneには「ノーコメント」
第3四半期中に販売されたスマートフォンは39万台で、同社は通期で「100万台超」(田中氏)のスマートフォンを販売できるとみる。12月23日に発売したグローバルモデルの「SIRIUSα IS06」、さらに今後発売予定の防水モデル「REGZA Phone IS04」やコンパクトモデル「IS05」によって、幅広い層にスマートフォンを訴求していく考え。
第1四半期のデータARPUが2300円、第2四半期のデータARPUが2310円、そして第3四半期のデータARPUが2320円と、スマートフォン導入によるトレンドの変化はまだ見えてこない。しかし、スマートフォンによって毎月割の適用やシンプルコースへの加入が進み、かつパケット定額サービスの選択が進めば、音声ARPU減少とデータARPU上昇の速度は加速すると田中氏は説明する。同氏は、2011年度にデータARPUが音声ARPUを上回り、さらに2012年度には総合ARPUが上昇に転じると予測を述べた。
そのほか、質疑応答ではCDMA2000対応iPhoneについて質問が及んだ。米国ではCDMA2000ネットワークを採用するVerizonから「iPhone 4」が販売される。利用する周波数帯が異なるものの、KDDIもCDMA2000を採用しており、iPhone 4販売の可能性があるのかに注目が集まったが、田中氏は「ノーコメント」を貫いた。また、NTTドコモが接続料の値下げを発表したことを受け、KDDIの対応を問われると、「当社も近々に値下げの届け出を出したい」と説明した。
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