多彩なネットワークとクラウドを強みにM2M市場で存在感を――ソフトバンクテレコムの荒木氏:SoftBank World 2012
ウィルコムを傘下におさめたことで、高速から低速まで多彩なモバイル網を手に入れたソフトバンクグループ。今後はその強みを生かし、M2M市場での取り組みを強化する。
モバイルネットワークは、人と人をつなぐだけでなく、モノとモノをつなぐ役割も果たしている。自販機やメーター、エレベーターなどに通信機能を付けて状態をチェックしたり、カメラに装備して監視したり、自動車に搭載して最新の地図や交通情報を送ったり――と、さまざまな用途で利用されている。
こうしたMachine to Machine(M2M)の市場は今後、モバイルネットワークの多様化や通信モジュールの低価格化、データ解析技術の高度化などを背景に、大きく伸びると予想されている。
荒木氏によると、2011年には680万に過ぎなかった国内モバイルM2Mの契約数は2016年に2000万を突破すると予測され、M2M関連市場の売上は、2015年には2011年の3倍にあたる3300億円に達するという見方もあるという。海外でも、2015年には4.5兆円規模の売上を誇る巨大市場になるとみられており、通信キャリア各社が今後注目の分野として期待を寄せている。
M2Mに注目が集まる中、ソフトバンクグループはどこを強みに、どんな戦略でこの市場でのシェア拡大を目指すのか。荒木氏が説明した。
多彩なネットワークが強み
荒木氏がソフトバンクグループの強みとして挙げるのが、多彩なネットワークを持っている点だ。これまでM2Mはモニタリング用途での利用が多く、データ通信量が少なかったが、今ではデジタルサイネージやテレマティクスなどでも利用されるようになり、用途に合ったネットワークが求められている。
ソフトバンクグループは、傘下の通信4社が固定、モバイル回線とM2M向けのソリューションを提供。M2Mサービスの提供を目指す企業は、ソフトバンクモバイルの3Gネットワークに加え、Wireless City Planningが提供するAXGPネットワークを利用した下り最大110Mbpsの「SoftBank 4G」(TD-LTE)、低速ながら安価なウィルコムのPHSネットワーク、ソフトバンクBBの固定ネットワークの中から、自社の業態に合ったネットワークを選択可能だ。
データを“定期的に、確実に”送る必要があるM2Mでは、エリアの広さが重要視されるが、電波が回り込みやすい900MHzを獲得したことで、3Gにおけるエリア問題も解消されると荒木氏。また、インドや中国などでの展開が予定されるTD-LTE、グローバルで導入が進んでいるFDD-LTE(ソフトバンクは年内にサービスを開始予定)を選べる点は、グローバル展開の際にメリットになりそうだ。
安価な低速通信のPHSは、“低消費電力”という特徴に磨きをかけて、M2M市場での普及を目指す。ウィルコムは、待受時にもバッテリー消費を極力抑えるチップセットを開発し、待受動作時の消費電力を従来の0.6mAhから0.125mAhに抑えることに成功。バッテリー交換なしで10年間の待受が可能な端末を開発できるところまでこぎつけたという。
「3G、4G、PHSというインフラでM2Mをサポートする。速度が遅くていいところはPHS、広範囲なエリアを必要とするところは3G、速度が必要なところは4G――というように、住み分けして市場全体をサポートする」(荒木氏)
導入事例としては、車に交通情報や気象情報、省燃費ルートなどを提供するテレマティクスサービス「インターナビ」(ホンダ技研)への3G回線の提供、遠隔検針やアラートに対応する東京ガスのガスメーターへの通信モジュール提供、自販機向け電子マネー端末への回線提供、福西電気のEVスタンド向け認証システムへの回線提供、日本光電のAED遠隔監視システムへの回線提供などがあるという。
パートナーとの協業で最適なソリューションを
M2Mビジネスでは、売上の中でネットワーク部分が占める割合は2割程度に過ぎない。これはM2Mビジネスを展開する上で、サービスプロバイダやソフトウェアベンダーとの連携がいかに重要かということを意味している。ソフトバンクグループではM2Mのパートナープログラムを用意して、各種M2Mサービスに最適なソリューション構築を支援する。
「ソフトバンクグループは、モバイルと固定のネットワーク、クラウドを提供してる。機器は機器メーカーに提供してもらうことになり、アプリもアプリベンダーに提供してもらわなければM2Mサービスは完結しない。そこをパートナーと一緒にやっていくのがソフトバンクのM2Mの仕事の仕方」(荒木氏)
また、iPadやiPhoneを持つ強みを生かし、スマートデバイスとM2Mサービスの連携にも力を入れる。「貯まったデータを遠隔から確認するというニーズも高まっている。スマートフォンやスマートパッド向けアプリを充実させて展開していきたい」(同)
M2Mの新たな分野として注目が集まるビッグデータの活用や、海外キャリアとの連携も進めながら、M2M分野での存在感を高めていくことを目指す考えだ。
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