第1鉄 西武特急レッドアロー号で芝桜に会いに行く:杉山淳一の+R Style(2/2 ページ)
肉食系鉄道ライター・杉山淳一が贈る、旅と鉄道がテーマの「+R Style」。日々の生活に+Railwayするだけで、毎日がぐっと楽しくなる――そんなコンセプトの新連載、第1回は西武鉄道に乗って、今が見頃の芝桜を見にいきます。
吾野駅から先は、路線名が西武秩父線に変わる。西武秩父線は秩父への観光の他に、武甲山から採掘された石灰石を輸送する目的で建設された。険しい山道をトンネルで貫く。特に長いトンネルは正丸トンネルという。長さは4811m、日本の私鉄では2番目に長いトンネルだ。トンネルばかりで景色はちょっと退屈だが、横瀬駅に停車したら周囲の風景を観察したい。かつての貨物輸送の名残が見つかるかもしれない。
羊山公園は横瀬駅からも行けるけれど、終点の西武秩父駅まで乗ろう。というのは、西武秩父線の線路が羊山公園内を通るから。トンネルを抜けた瞬間に注目だ。そしてレッドアローは終着駅の西武秩父駅へ。左手から近づいてくる線路は秩父鉄道だ。春から秋までSL「パレオエクスプレス」が走ることでも知られている。しかし、それはまた別の機会にしよう。
日本有数の「花の海」へ
羊山公園は芝桜の丘とも呼ばれている。ここは北海道の滝上町などと並んで日本有数の芝桜の名所。約40万株の花が約1万6500平方メートルの大地を埋め尽くす。それはまるで桃色の海のようであり、花の波の向こうにはひょっこりと武甲山が立っている。青空と芝桜のコントラストを楽しむなら、ぜひ晴天を選んで出かけたい。芝桜の開花状況は秩父観光協会(参照リンク)のWebサイトを開くと写真で確認できる。
ここで芝桜についての豆知識。芝“桜”と言っても桜ではなく、正しくはハナシノブ科とのこと。羊山公園に植えられた品種は濃いピンクの「スカーレットフレーム」や薄いピンクの「オータムローズ」、白い「リットルドット」など8品種。詳しい名前と解説は、羊山公園で配布されるパンフレットに記載されている。
なお、羊山公園はふだんは無料で入場できるが、芝桜の時期だけは300円の入場料が必要になる。これは芝桜の整備のために使われるそうだ。もっとも、パンフレットをもらえるし、記念品として芝桜ポストカードももらえるので損をした気分にはならない。
羊山公園の最寄り駅は西武鉄道秩父線の「横瀬」駅、または「西武秩父」駅。そして秩父鉄道の御花畑駅。西武鉄道は「花さんぽ」という観光Webサイト(参照リンク)を作るほど力を入れている。
秩父鉄道も芝桜観光に力を入れているようで、4月1日から「御花畑」駅を「御花畑(芝桜)」駅に改称する。ホームの駅名標なども芝桜をあしらった明るいデザインに一新するそうだ。鉄道ファンとしては芝桜と同じくらい重要なことである。今回は池袋から西武鉄道を使うルートを紹介したが、秩父鉄道を利用すれば、東武伊勢崎線の羽生、JR高崎線の熊谷、東武東上線とJR八高線の寄居からもアクセスできる。秩父鉄道のSL列車と組み合わせた旅も楽しい。秩父からちょっと足を伸ばせば長瀞の桜やライン下りも楽しめる。東京からの日帰り旅行プランとしてはツウ好みと言えそうだ。
今回の電車賃
西武鉄道 池袋−西武秩父 運賃片道1370円(乗車券750円、特別料金620円)
著者プロフィール:杉山淳一
肉食系鉄道ライター(魚介類が苦手)にして、前世からの鉄道好き。生まれて間もなく、近所を走っていた東急池上線の後をついていったという逸話あり。曰く「いつもそばを走ってたから、あれが親だと思った」
コンピューター系出版社でゲーム雑誌の広告営業を経験した後、フリーライターとなる。オンライン対戦ゲーム、フリーウェア、PCテクニカルライティングなどデジタル系の記事を専門とし、日本初のEスポーツライターとしてオンライン対戦ゲーム競技を啓蒙する。
趣味は日本全国の鉄道路線探訪で、現在の路線踏破率は約8割。著書は「知れば知るほどおもしろい鉄道雑学157(リイド社)」、「A列車で行こう8 公式ガイドブック(エンターブレイン)」など。
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