ジャンボよ、永遠に! シンガポール航空747-400ラストフライト搭乗記:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(2/4 ページ)
約40年にわたって世界の空を飛び続けてきたシンガポール航空のボーイング747の歴史に、ついにピリオドが打たれた。「SQ747/748」という便名を冠したこの特別便で、世界中から集まった多くのファンとともにシンガポール/香港を往復した。
ジャンボファンの日本人カップル
私は4月6日の早朝6時過ぎにシンガポール・チャンギ空港のターミナル3に到着し、指定された「SQ747便」のゲートへと移動した。ゲート前にはウェルカムドリンクや朝食が用意されたセレモニー会場が準備され、シンガポール航空の747-400の写真が掲げられた特設ステージを大勢の人たちが囲んでいた。顔見知りのシンガポール航空関係者も少なくない。しかしイベント会場を埋め尽くしているほとんどが、シンガポールと香港を日帰りで往復するためだけに世界中から集まった熱烈なジャンボファンたちだ。
ラストフライトへの出発準備を進める747-400をウィンドウ越しに眺め、記念にと写真を撮っている人たちもいる。私はその中に、日本人らしいカップルを見つけた。
名古屋市内のホテルに勤務する田中義紀さん(39)と、不動産業を営む窪田有里子さん(38)。2人は私の問いかけに「はい、747の大ファンなんです」と口をそろえた。1年ちょっと前に彼らが最初に出会ったのも、ジャンボの機内だったそうだ。「2011年の2月28日でした。成田から那覇へのJALの747-400ラストフライトに、偶然いっしょに乗り合わせたんです」と田中さんはその日を振り返る。窪田さんのジャンボとの出会いは古く、彼女は幼少の頃にANAの747国内線就航初便にも搭乗したらしい。もう32年も前のことだ。
個性的なフォルムと4基のエンジン
機体前方に2階席があるため独特な形状をしたボディと、大きな主翼に装備されたパワフルな4基のエンジン──ボーイング747はどの角度から見ても、遠くからでも、その個性的なシルエットで機種を確認できた。
「この名機を“時代に合わない”と片づけてしまうには、あまりに惜しいですよね」
田中さんが言うように、747は日本でも根強いファンが多い。日本人にとっては最も名の知れた、かつ魅力的な旅客機だった。駐機中の機体を見つめながら、窪田さんも「どっしりと安定していて、少々の風にもあおられません。気流の悪いところを飛んでもジャンボの揺れはじつにしなやかです」と感慨深げに話す。まるで恋人を語るような口調で、だ。
パイロットや整備士、キャビンクルーたちからの評価も高い。「双発機はエンジン1基が止まると緊急着陸しなければならないけれど、4発基は1基が止まってもそのまま飛行を続けられるので安心だよ」「747の客室は他の機種と比べて圧迫感がないですし、ギャレーが広くて働きやすいんです」「ライン整備を終えて機体が優雅に飛び立っていく姿を、背中から見ているのが好きだったなあ」──さまざまな立場でジャンボの魅力を語る声が、いまもあちこちから聞こえてくる。
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