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ジャンボよ、永遠に! シンガポール航空747-400ラストフライト搭乗記秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(3/4 ページ)

約40年にわたって世界の空を飛び続けてきたシンガポール航空のボーイング747の歴史に、ついにピリオドが打たれた。「SQ747/748」という便名を冠したこの特別便で、世界中から集まった多くのファンとともにシンガポール/香港を往復した。

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社員によるプロ顔負けのパフォーマンス

 出発前の記念セレモニーは午前7時ちょうどに始まった。最初にステージに上がったのはシンガポール航空のコマーシャル担当上級副社長、マック・スゥイー・ワー氏だ。副社長は「乗客のみなさんと私どもの社員たちの40年間にわたる思い出がつまった747が退役するのはとても悲しいことですが、今日は“空の女王”747-400に敬意を表し、最後のメモリアルフライトをどうぞ心ゆくまでお楽しみください」とあいさつ。その後、大きな銅鐸(どら)の音とともにステージに紙吹雪が舞い、会場ではシンガポール航空のキャビンクルーたちによるダンスパフォーマンスが繰り広げられた。

飛行機と空と旅
各年代に合わせた歌とダンスで会場を盛り上げるキャビンクルーたち

 カラフルなステージ衣装に着替えたクルーたちは、747が活躍した1970年代から80年代、90年代と各時代のヒットチャートにあわせて、プロ顔負けの歌とダンスを披露する。これまで私は長年空の旅を続けてきたが、エアラインスタッフによるこんなパフォーマンスは一度も見たことがない。

 7時55分、ボーディング開始のアナウンスが流れ、搭乗ゲートではこの特別便への乗客だけに用意された記念品が1人ひとりに手渡された。747-400のキャビンはファーストクラス12席、ビジネスクラス50席、エコノミークラス313席の計375席でレイアウトされている。空きはもちろん、1席もない。

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チャンギ空港のランプエリアでラストフライトを見送るスタッフたち

上空での機内はまるでパーティ会場

 SQ747便は8時40分にランウェイ02から離陸した。水平飛行に移り、シートベルト着用サインが消えると、キャビンはにわかにパーティ会場と化す。乗客全員に配られたシャンパンで乾杯したあとは、スタッフが司会役を務めてのビンゴゲームやクイズ大会がスタート。司会者が「ゲームの賞品には到着後のコクピット見学などを用意しています」と伝えると、一部マニア層から驚喜の声があがった。その後は、民族衣装サロンケバヤのユニフォームに身を包んだキャビンクルーを囲んでの大撮影会だ。

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機内ではキャビンクルーから乗客全員にウェルカムシャンパンが配られた

 機内食もこの日は特別メニューが用意された。ビーフやフィッシュのメイン料理のほか、トレイには「747」の文字がデコレートされた特製ケーキのデザートも。このメモリアルフライトには、ゲストとして招かれた元シンガポール航空の747チーフパイロット、ケネス・トフト機長らも同乗している。彼らは食事の間も休ませてもらえない。取材記者に囲まれてのインタビューや、乗客との記念撮影に終始引っ張りまわされていた。

 シンガポール/香港間は通常の定期便では約3時間のフライトである。しかしこのスペシャル便は1時間多い4時間。機は途中まで機首をフィリピンのマニラに向けていた。そしてマニラの手前から針路を北北西に変更して、目的地である香港へ。12時50分、やや雲が増え始めた香港国際空港に着陸すると、すべてのキャビンに乗客たちの歓声と大きな拍手が鳴り響いた。

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それぞれの思いを胸に747-400のラストフライトを記憶に刻み込むファンたち

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