ジャンボよ、永遠に! シンガポール航空747-400ラストフライト搭乗記:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(4/4 ページ)
約40年にわたって世界の空を飛び続けてきたシンガポール航空のボーイング747の歴史に、ついにピリオドが打たれた。「SQ747/748」という便名を冠したこの特別便で、世界中から集まった多くのファンとともにシンガポール/香港を往復した。
上級副社長と機内で3年ぶりに再会
香港からの折り返し便となるSQ748便のフライトでも、コクピットやキャビンを担当するクルーこそ入れ替わったものの、同様なプログラムが用意されていた。シャンパンで祝杯をあげ、キャビンクルーとゲームで盛り上がり、特別メニューの食事を楽しんでからは機内での撮影会。乗客たちは「これで本当に最後なんだ」という思いを噛みしめながら、1つひとつのシーンを記憶にしっかりと刻み込もうとしているように見えた。
途中私は、メインデッキ最前方にあるファーストクラスにも足を運んでみた。ホスト役であるシンガポール航空の関係者たちが、マスコミの記者たちに囲まれている。上級副社長のワー氏とは、私は3年前にフランス・トゥールーズで会って以来の再会だった。
3年前には、シンガポール航空がエアバス本社工場で新造のA330-300の1号機を受領する際に取材に行き、現地で彼に単独インタビューした。副社長もそのときのことを覚えていたようだ。ファーストクラスに顔を出した私を見ると、彼は近寄ってきて「東京からようこそ」と声をかけてくれた。上の写真は、そのときの歓談の様子を同行していた日本人記者が撮影してくれたものである。その15分ほどのやりとりの中で、私はワー氏からこんなメッセージを託された。
長距離大量輸送の主役は総2階建てA380に
「世界の中でも、日本には747ジャンボに特別の思いを寄せているファンの方が大勢いると聞いています。シンガポール航空が運航してきた747も、たくさんの日本の方々に応援していただきました。私を含めたシンガポール航空の社員一同から、これまで支えてくれた日本のみなさんに、ぜひ感謝の気持ちとお礼の言葉をお伝えください」
747が退役しても、同社にとっての日本市場の重要性は変わらない。最新の翼を世界に先駆けて導入するというフリート戦略はいまなお健在で、2008年5月にはエアバスのオール2階建て機A380を成田線でデビューさせた。747による長距離大量輸送の主役は、現在はA380にバトンが受け継がれている。副社長は「シンガポールと世界の主要各国を結ぶ路線にA380を投入していますが、なかでも東京路線は最大の成功事例です」と私に語った。
A380の就航に合わせて滑走路やターミナルが拡張されたチャンギ空港の駐機スポットには、アジアやオセアニア、ヨーロッパへ向かうA380が5機、6機と翼を連ねている。その光景は壮観だ。747-400に別れを告げるメモリアルフライトで香港を往復し、シンガポールに戻った翌朝、私はA380で運航されている9時25分発のSQ012便で帰国の途についた。
著者プロフィール:秋本俊二
作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各メディアにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動。
著書に『ボーイング787まるごと解説』『ボーイング777機長まるごと体験』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』『もっと知りたい旅客機の疑問50』『みんなが知りたい空港の疑問50』『エアバスA380まるごと解説』(以上ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)、『新いますぐ飛行機に乗りたくなる本』(NNA)など。
Blog『雲の上の書斎から』は多くの旅行ファン、航空ファンのほかエアライン関係者やマスコミ関係者にも支持を集めている。
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