飛行中の機体の向きは、どう変える?:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(4/4 ページ)
上空で飛行中の機体の向きを変えるとき、コクピットではどんな操作をしているのか? 濃霧の中でもなぜ旅客機は安全に空港に降りられるの? 「旅客機と空港のQ&Aシリーズ」第4弾は、巡航飛行から着陸までの4つの疑問に答えていく。
濃霧の中で旅客機はどう着陸する?
世界の空を旅していると、ごくまれに濃霧による視界不良で目的地の空港に降りられないケースが出てくる。その場合は「ダイバート」といって、あらかじめ計画された代替空港へ向かうことに。いま私が向かっているロンドンも「霧の都」などと言われているし、日本の空の玄関である成田空港周辺も、とくに秋口などに霧が発生しやすいエリアとして知られる一つだ。夜間にかなり冷え込み、その翌朝に太陽が昇り始めて気温が急上昇すると、一帯に深い霧がたちこめることがある。
「でも、大都市の大きな空港は大丈夫ですよ」と、ある国際線機長は言う。「よっぽどの悪天候で視界がまったくきかないという状況にでもならない限り、濃霧の中でも通常どおり安全に降りられます」
視界の悪い濃霧の中で、旅客機はどうやって滑走路に降り立つのだろうか?
成田をはじめ世界の主要空港では、濃霧の中でも安全に着陸できる。その理由は、「ILS(計器着陸装置)」が備わっているからだ。
ILSは着陸進入する旅客機に対して、空港近くの地上施設から指向性誘導電波を発射し、滑走路まで安全に誘導するシステム。誘導電波は「ローカライザー」と「グライドパス」からなり、ローカライザーは旅客機に進入方向(横位置)を知らせる役割を、グライドパスは進入角度(縦位置・高さ)を知らせる役割を担当する。これらの目に見えない電波によって上空の現在地点から滑走路の着地点まで“空の道”をつくり、その道に沿って旅客機を正確に案内しているのだ。
装備しているILSの性能(運用精度)は空港によって違う。具体的には「カテゴリー I」から「カテゴリー III」に分かれ、カテゴリーIIIはさらに「IIIa」から「IIIb」へ、そして「IIIc」へと進化を遂げた。成田などカテゴリーIIIの中でも高いレベルのILSを導入している空港では、悪天候・低視程での着陸が可能。霧の発生しやすい地域でありながら、コクピットから眺めてほとんど視界がゼロという状況でも安心して空港に降りられるようになっている。
著者プロフィール:秋本俊二
作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各メディアにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動。
著書に『ボーイング787まるごと解説』『ボーイング777機長まるごと体験』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』『もっと知りたい旅客機の疑問50』『みんなが知りたい空港の疑問50』『エアバスA380まるごと解説』(以上ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)、『新いますぐ飛行機に乗りたくなる本』(NNA)など。
Blog『雲の上の書斎から』は多くの旅行ファン、航空ファンのほかエアライン関係者やマスコミ関係者にも支持を集めている。
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