JALの現役CAに聞く──ファーストクラスのサービスと“和”のもてなし:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(2/4 ページ)
JALが利用者数を伸ばしている。その“復活”を支えてきたのが、サービスの最前線で活躍するCA(客室乗務員)たちだ。JALサービスの極意について、最高峰であるファーストクラスを担当する現役CA、秋澤麻由さんに聞いた。
訓練後は国内線での乗務からスタート
──どのCAも最初はみんな国内線からの乗務ですよね。
秋澤: キャリアパスはその時々で多少変わりますが、基本の流れは変わりません。私の場合はまず、国内線を2年弱経験しました。その後、国際線に移って、エコノミークラスでの乗務を1年ほど。また同じ国際線でも、比較的短いフライトもあれば、ロングフライトの路線もあります。ロングフライトのほうが、気持ちの面では余裕が持てますね。先輩からも「ロングフライトは挽回のチャンスがあるから」と教えられました。もちろんミスはしてはいけないのですが、何か失敗があっても、長い路線だとその後もお客さまと接する時間が多いので取り返すことができるんです。
──なるほど。そういう経験をいろいろ積んでから、ビジネスクラスへの移行訓練に入るわけですね。
秋澤: 私のときは、ビジネスクラスとファーストクラスの訓練がいっしょでした。乗務員の訓練は保安要員としての訓練とサービス要員としての訓練の2つに分かれますが、保安要員としての基本はどのクラスでも変わりません。緊急脱出などお客さまの安全を守るための訓練を毎年続け、きちんと体得しているかどうかチェックを受けます。サービスの訓練では、業務の流れやお客さまへの応対を学ぶという点は同じですが、機内食の種類など内容はかなり変わりますね。エコノミーでは“全体の最適化”というか、みなさんにハッピーな気持ちで降りていただくことを目標にしていますが、ビジネスクラスでは“個別サービス”の色合いがエコノミーよりもぐっと増します。
──ビジネスクラスでは、1人のCAが何人の乗客を担当するんですか?
秋澤: 大型機のボーイング777の例でいいますと、最大で乗務員1人が18人のお客さまを担当します。その人数をみてもエコノミーでのサービスに比べてよりパーソナルな部分が増えますが、かといって、ファーストクラスほどではありません。ファーストからみると、ビジネスクラスでの仕事は時間とのたたかいという面がまだ残ります。担当する人数は減るものの、やるべきことは増えますからね。お食事ひとつをとっても、お飲み物のサービスから始まって、次に前菜をお配りし、メイン料理をお出しして……。そういう一連のサービスを、限られた時間の中でいかにきちんとこなしていくか。慣れないうちは、そのことで頭がいっぱいになります。
──ファーストクラスになると、そういう点がまったく違う?
秋澤: 違いますね。ビジネスクラスまでは、例えば水平飛行に移ってシートベルト着用サインが消えると、まず冷たい飲み物のサービスから始まって、次にお食事のサービスに移ってと、みなさんにサービスする時間とか流れが共通しています。しかしファーストでは、決まった時間がありません。お客さま一人ひとりに、機内での時間をお好きなように過ごしていただく。それがサービスのコンセプトになります。
──ファーストクラスで1人のCAが担当する人数は?
秋澤: 同じ777でいうと、3人の乗務員で最大9人のお客さまを担当します。ですが、1人が3人を、という形ではありません。9人のお客さまが乗っていれば、CA全員がお客さまの情報を共有し、あくまで3人で9人のお客さまをおもてなしするというスタイルをJALではとっています。その点が、他のエアラインとは違うかもしれません。1人が3人のお客さまを専属でみるという分担制ではなく、グループ制をとることによって、どのお客さまにも必要なときにきちんと満足いただけるサービスを提供できると考えています。
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