また新たな「遺産」が生まれた――ロンジン ヘリテージ ミリタリー 1938:LONGINES HERITAGE COLLECTION(1/2 ページ)
スイスの老舗ウオッチブランド「ロンジン」。180余年の歴史から生まれる「ヘリテージ コレクション」の新作が、バーゼルワールド2013でデビューした。
著者プロフィール:篠田哲生(しのだ・てつお)
1975年生まれ。時計ライター。講談社『ホット ドッグ・プレス』を経て、フリーランスに。時計学校を修了した実践派で、時計専門誌からファッション誌、Webなど幅広い媒体で時計記事を執筆。高級時計からカジュアルウォッチまでを守備範囲とし、カジュアルウォッチの検索サイト『Gressive Off Style』のディレクションも担当。著書に『成功者はなぜウブロの時計に惹かれるのか。』(幻冬舎)がある。
1832年に創業したロンジンは、スイス屈指の名門時計メーカーとして知られる存在だ。数あるコレクションの中でも特に評判が高いのが、「ヘリテージ コレクション」。過去の遺産(ヘリテージ)を引用しつつ、現代的なアレンジを加えた最新作を、世界最大の時計と宝飾の見本市「バーゼルワールド」からリポートしたい。
時計業界では“手堅いモデル”が増えている
見本市会場の改装に伴い、例年よりも遅い4月末に開催されたバーゼルワールド。世界最大の時計と宝飾の見本市と言われるだけあって、参加メーカーは1460社を数え、入場者は12万2000人と、2012年よりも17%も増えたという。
この見本市では、時計メーカーたちが新作モデルを発表するわけだが、全体を俯瞰しての印象は「今年も手堅くまとめているなぁ」といったところか。
実はここ数年の時計業界では、「原点回帰」がキーワードになっている。つまり、過去の傑作デザインを引用することで、確実に売れるモデルを作ろうというコンサバティブな姿勢が広がっているのだ
「ロンジン ヘリテージ ミリタリー 1938」/オリジナルモデルに元も近いモデル。シンプルにまとめているが、夜光塗料のスーパールミノバを使用しており、暗闇であっても時刻の読み取りが容易だ。自動巻き、ステンレススチールケース、ケース径40ミリ。18万9000円(今秋発売予定)
欧州経済が相変わらず先行き不透明なので、冒険をしたくないという後ろ向きの理由もあるだろう。しかしユーザーから見ても、すでに数十年前に評価されたお墨付きのデザインなら評価が大崩れすることはないという“安心感”がある。それに時計メーカーにとっても、自社の歴史に光を当てることで、ブランド力の再評価に繋がるのだから、コンサバティブな姿勢が悪いということではない。
実際に時計店でも、定番モデルの方が良く売れるという。高い買い物だからこそ、永く使える外れのない時計を選びたいという消費者の意識も、新作のコンサバティブ化に拍車を掛けているようだ。
原点回帰を進めるメーカーの中でも特に積極的なのが、1832年に創業したスイス屈指の老舗ロンジンだ。彼らは過去の遺産を現代によみがえらせる「ヘリテージ コレクション」に力を入れており、毎年数多くのモデルをリリースしている。
それはなぜか? ロンジンは創業以来、スイスのサンティミエという街から本社や工場を動かしていない。そのため貴重な資料や過去モデルが散逸せず、歴史や伝統の伝承が上手くいっている。
しかも現在ロンジンの社長を務めるウォルター・フォン・カネルさんは、1969年にロンジンに入社し、1988年から現職。つまり40年以上もロンジンとともに歩んできた。そのためロンジンの戦略には一貫性があり、現在と過去を結びつけることが容易なのだ。
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