夢の国産旅客機が世界の空を舞う:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(1/5 ページ)
MRJ(三菱リージョナルジェット)の離陸が間近に迫っている。予定している初飛行は、2013年の第3四半期。多くのファンが待ち望んだ国産旅客機の実用化に向け、これからの半年間はまさに正念場だ。
ミツビシとホンダ──。そう聞いて、何を思い浮かべるだろうか? 少し前なら多くの人が「自動車」と答えたに違いない。しかし現在は、「ジェット旅客機」こそがこの2社に共通する旬のキーワードだ。夢の国産旅客機が、いよいよ離陸する。
戦後唯一の国産旅客機
三菱重工業の関連施設が集まっている愛知県名古屋市の大江町。三菱航空機もその一角に社屋を構える。1937年に竣工した古い建物で、目印は最上部にそびえる時計塔だ。かつてあのゼロ戦(零式戦闘機)もここで設計された。
「時代は変わったものの、旅客機の開発は誰にとっても夢でした」と、エンジニアたちは語る。「技術立国ニッポンの未来は、どんな分野の技術がリードしていくのか? これまでわが国経済を支えてきた自動車や家電に代わる次なる産業の芽を、いまから育てておく必要があると思っています」
その大役を、彼らは担おうとしているのだ。
MRJはローンチカスタマーであるANAへの引き渡しを2015年度半ばに予定している。思えばそのちょうど50年前の1965年に、戦後唯一の国産プロペラ旅客機YS-11が就航した。
YS-11の最初の路線は、のちにJALと統合したJAS(日本エアシステム)の前身、日本国内航空が運航する東京/徳島/高地を結ぶ定期ルートだった。それから41年間、国内外を飛び続け、惜しまれつつも日本の空から退役したのが2006年9月。生産自体は、それより34年も前の1972年に終了してしまっている。360億円の赤字を出して、182号機目を最後に。
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