JALの最新ビジネスクラス「SKY SUITE 777」を創った男たち――第2回「個室型フルフラットシート」:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(5/5 ページ)
10時間のフライト後でも「もう少し乗っていたい」という声が乗客から出るというJALの新しいビジネスクラス「SKY SUITE 777」。一般には不人気な、真ん中の席をあえて選ぶ人も多い“2-3-2”配列シートの秘密とは?
両側に人が乗る“真ん中席”をあえて選ぶ人も
――米国アリゾナ州にあるシートメーカーの工場にも、何度も足を運んだと聞きました。
藤島: 試作品が完成したと聞いて、居ても立ってもいられなかったので……。日本に試作品が届くまでには半月以上かかるので、だったらこっちから出向いてしまおうと。そのまま工場に泊まってしまったことも、1度や2度ではありません。
――工場に泊まったのですか? ホテルではなく。
藤島: 完成した試作品も、目で見ただけでは評価できません。座ってみても、30分や1時間では実際の快適さは分からないと判断しました。それで、一晩寝てみようと思い立ったんです。結局、3泊しましたね。工場の人たちは、朝来ると私が寝ているので、みんなびっくりしていました。「おまえ、ホテルに泊まるお金がないのか?」って(笑)。
――でも、そうした苦労の成果はありましたね。斜め配置の“ヘリンボーン型”や互い違いの“スタッガード型”が出てきて、もうこれでアイデアは出尽くしたのかなと思っていたら、まさかこんな手があったとは! 私もJALの「SKY SUITE 777」が発表されたとき、本当に驚きました。
藤島: “2-3-2”のシート配列で、2本の通路にはさまれた中央の3席並びのうち、両サイドに人が乗る真ん中は「ハズレ席」などと言われてずっと敬遠されてきました。最初にお話しした2009年のエアラインエキスポで、今回の新プロダクトのヒントになったシートを見たとき、その課題もこれでクリアできると閃きいたんです。
――個室型ブースを通路の分だけずらして配置する、というのは、革新的な発想ですよ。ニューヨーク線の機上で話したパーサーから「このキャビンでは、あえて真ん中席を選ぶお客さまもいる」と聞いて、びっくりしました。
藤島: 窓側とか通路側とか、どの席にも個性があって、人によって好き嫌いが出てきます。かつてのシートづくりでは、その個性をなくす方向で知恵を絞っていましたが、今回は「個性をより際立たせよう」という発想に変えました。両方の壁に挟まれた閉鎖的な空間を、より「個室に近い」ととらえるお客さまもいるようです。2回、3回とお乗りいただいているお客さまの中には、窓側、通路側、真ん中席とそのつど違うタイプの席を指定してフライトを楽しまれている人もいると聞きました。
――例えばホテルだと、いろんなタイプの部屋があります。同様に飛行機にも、違う個性のシートが並んでいるというのは楽しいですね。私も、次は真ん中席を試してみようと思います。今日はありがとうございました。
JALの新しいビジネスクラス「SKY SUITE 777」を、筆者自身の体験と、関係者へのインタビューでレポートする本企画。次回は「空の上のレストラン」についてレポートします。
編集部より:秋本俊二さんと、「世界で最も多くの航空会社に搭乗した人」ギネス記録保持者・チャーリィ古庄さんの対談動画を公開中です!
本連載「秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話」にもたくさん写真を提供いただいている航空写真家・チャーリィ古庄さんが、「世界で最も多くの航空会社に搭乗した人」としてギネス認定されました。これを記念して、連載筆者の秋本さんとの対談を実施。動画を公開しています。
パイロットのライセンスを取得、成田空港の近くに引っ越したというチャーリィ古庄さんは、世界中の飛行機の写真を撮り、航空写真教室や撮影ツアーの企画もするという飛行機好き。そのチャーリィさんに、「航空写真を撮っていて困ったことはありませんか?」「乗ってて面白かったとか、印象に残った飛行機って何かありませんか?」「機内食ですごくおいしかったのはどこですか?」「最新の飛行機のサービスでスゴイものは?」「空港の上手な利用法を教えてください!」などなどいろいろ質問してみました。チャーリィさんの飛行機写真もたっぷり入った動画、ぜひお楽しみください。
→秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話・特別編:チャーリィ古庄×秋本俊二対談「ギネスと旅と飛行機と」
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