シートと機内食に見るファーストクラスのニュートレンド:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(1/3 ページ)
キャビン最前方の仕切られた空間に、ごく限られた数だけ設置されているファーストクラス。閉ざされたカーテンの向こう側には、どんな世界が広がっているのか? 豪華シートと機内食から、この最上級クラスのニュートレンドを探ってみる。
客室乗務員に迎えられて機体の左サイド前方の乗降用ドアから機内に入ると、大多数の乗客は右手に折れて通路を奥(後方)へと進んでいく。エコノミークラスの乗客も途中、手前側に設置されたビジネスクラスのキャビンを通っていくから、ビジネスクラスにどんなシートがどう配置されているは多くの人がご存じだろう。
しかしファーストクラスに関しては、一般の乗客はのぞき見ることすらできない。ファーストクラスは通常、乗降用ドアを入って左手──つまりコクピットに近い最前方に設置されているから、ビジネスクラスの乗客さえ足を踏み入れることがないのだ。厳重に閉ざされたカーテンの向こう側には、どんな世界が広がっているのか? 豪華シートと機内食から、その最上級クラスのニュートレンドを探ってみる。
“プライベート型”と“オープン型”
ここ数年はビジネスクラスでも、シートが180度水平に倒れるフルフラット型が当たり前になった。かつてファーストクラスを利用していた層が「ビジネスで十分」とクラスをシフトするケースも見られ、需要減からファーストクラスを廃止するエアラインも出てきている。そうした中で現在もファーストクラスを存続させているエアラインの多くは、同クラスを“ステータスシンボル”と位置付けているようだ。「ファーストを超えるファースト」と呼ばれる超豪華シートを発表したエアラインも少なくない。
その典型例が、まるでホテルのような「個室型」シートを導入したシンガポール航空やエミレーツ航空(参照記事)だろう。両社とも、一人ひとりのスペースをパーティションで仕切って完璧なプライバシーを実現。スイートルームで過ごすような時間を提供している。
対照的にルフトハンザがオール2階建て機A380に導入したファーストクラスシートは、キャビン設計に際して“開放性”を重視。各シートには就寝時に使う収納式パーティションも設置されているが、パーティションを使用しないときはキャビン全体を見わたせ、客室乗務員や他の乗客とのコミュニケーションがとりやすい「オープン型」を採用した。ロック可能なパーソナルクローゼットを備えて、頭上の荷物棚を廃止したことも、空間の広さを感じさせる理由だ。
個室型とオープン型の「中間」をゆくシートも存在する。JALが長距離国際線の主力機材として使用するボーイング777-300ERに導入した最新ファーストクラス「NEW JAL SUITE」などがそれだ。心地よい「住まい」をイメージして木目調のデザインを採用。シートスペースがそのまま書斎や寝室としても使えるのも特徴で、機能性と質感を高め、エアラインサービスの“最高峰”と呼べるクオリティに仕上げた。
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