JALの最新ビジネスクラス「SKY SUITE 777」を創った男たち――最終回「機内Wi-Fiサービス」:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(4/6 ページ)
飛行機に乗っている間もインターネットが使えれば、高度1万メートルの上空が文字通り「雲の上の書斎」になる――それを実現するサービスが「JAL SKY Wi-Fi」だ。ニューヨーク線で機内インターネットを使ってみた秋本さんの感想は?
地上と同じ環境を機内で実現
――経営破たんしたときも、江幡さんは機内Wi-Fiの導入を検討するような仕事だったのですか?
江幡: そうです。その時から、社内は大きく変わりはじめました。他社に先駆けていいものを提供したいとか、新しいものをお客さまに届けたいという思いが欠けていたことを、社員みんなで反省しまして。チャレンジ精神の欠如に社員一人ひとりが気づいたんですね。そこで、どうすればお客さまに再び選んでいただけるエアラインとして復活できるのか? 議論を進めるなかで、2010年にプランに上がったのが、これまでにない個室型フルフラットシートの開発であり、機内食の刷新であり、そしてもう一つが機内エンターテインメントとしての新たな価値を提供することでした。
――その一つがWi-Fiのサービスだったわけですね。利用者からも、機内でインターネットやメールを使いたいという要望は多かったのでしょうか?
江幡: 確実に増えていました。例えば2011年3月の東日本大震災のとき、被害の状況が連日連夜ニュースで流れていたのに、飛行機に乗っている時間だけは情報が途絶えてしまう。その不安に耐えられないという声も多かったんです。そこで、フライト中も地上と変わらない状態で情報にアクセスできる環境を実現しようと、導入に向けた取り組みを開始しました。
――社内で反対の声はなかったのでしょうか? 以前、コネクション・バイ・ボーイングのシステムを導入したときは「飛行機に乗ってまで仕事なんかしたくない」という声も多かったと記憶していますが。
江幡: ありましたね、反対の声も。そんなものが機内に本当に必要なのか。前のときは利用する人がほとんどいなかったじゃないか、と。ですが、かつてとは状況が一変していました。iPadなどのタブレットも普及し始めていましたし。決してエンターテインメントとして導入しようと思ったわけではありません。メールでの通常の連絡や、やりかけの仕事があれば、飛行機に乗る前に駆け込みの形で終えなくても、機内でゆっくりやればいい。そんな地上と同じ環境を機内に実現することが必要と考えました。
――地上と変わらない環境というのは、とてもありがたいですよ。私もよく、現地の最新情報を出発直前に空港ラウンジで入手したり、渡航先で会う約束になっている人と「これから予定どおり出発する」とメールのやりとりをしてきました。しかしそれでも、離陸後に天候の急変などで到着時間が変更になるケースはある。その連絡を、機内Wi-Fiがあれば上空からできます。「30分到着が遅れると機長からアナウンスがあったから、到着ロビーのカフェでお茶でも飲んでいて」とメールが打てるんです。
江幡: 特に飛行時間が10時間を超える欧米線を利用する場合、出発前にいろいろ終えなければならないことがあると、それがとても大きなストレスになると言われるお客さまも少なくありませんでした。仕事が滞るのがイヤだから飛行機に乗らない、出張に出ないという人もいたくらいです。そういう意味で、機内Wi-Fiの存在意義は大きいのでしょうね。
関連記事
- ムチャ振り弾丸取材シリーズ:1泊3日でロンドン往復! JALの機内インターネットで何ができるのか?
「到着した瞬間にメールが大量に届くのが嫌だ」「ソーシャルゲームの連続ログインやタイムボーナスを見逃したくない」「無事であることを伝えたい」――フライト中の飛行機でインターネットができるなら、約20ドルは安いものかも!? - 機内Wi-Fi担当者に聞く:国内線機内でインターネットし放題――JALが機内Wi-Fiサービスを拡充するワケ
JALの機内でインターネットがつながるWi-Fiサービス「JAL SKY Wi-Fi」。いよいよ2014年7月から国内線でもサービスを始まる。JALの担当者に、その狙いを聞いた。 - 秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話:JALの最新ビジネスクラス「SKY SUITE 777」を創った男たち――第3回「空の上のレストラン」
いまやそのサービスはファーストクラスに近い……JALのビジネスクラスでの食事「BEDD」はそう感じさせてくれるほどレベルが高い。「和」にこだわり、4人の著名な日本人シェフを中心にドリームチームを結成。ドリームチームが手がけるその美食とは? - 秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話:JALの最新ビジネスクラス「SKY SUITE 777」を創った男たち――第2回「個室型フルフラットシート」
10時間のフライト後でも「もう少し乗っていたい」という声が乗客から出るというJALの新しいビジネスクラス「SKY SUITE 777」。一般には不人気な、真ん中の席をあえて選ぶ人も多い“2-3-2”配列シートの秘密とは? - 秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話:JALの最新ビジネスクラス「SKY SUITE 777」を創った男たち──第1回「地上サービス」
JALの新しいビジネスクラス「SKY SUITE 777」が好評だ。その快適さと、企画に携わった裏方たちの“素顔”を、4回に分けてリポートする。第1回のテーマは「ラウンジ」。メゾンカイザーのクロワッサン、Soup Stock Tokyoのスープ、シャワーにマッサージのサービスも受けられる。 - 秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話・特別編:チャーリィ古庄×秋本俊二対談「ギネスと旅と飛行機と」
「世界で最も多くの航空会社に搭乗した人」としてギネス記録に認定された、航空写真家のチャーリィ古庄さんと、秋本俊二さんの対談を公開します。美しい航空写真と楽しいエピソード、そして2人の飛行機愛がたっぷり詰まった動画をお楽しみください。 - 秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話:「世界で最も多くの航空会社に搭乗した人」にギネス認定された、チャーリィ古庄さんってどんな人?
本連載にも多くの写真を提供していただいている航空写真家・チャーリィ古庄氏が「世界で最も多くの航空会社に搭乗した人」としてギネス記録に認定された。飛行機での旅をこよなく愛する古庄氏の“素顔”を紹介する。 - 「秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話」バックナンバー
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.