エアバスの最新鋭旅客機「A350XWB」搭乗レポート:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(3/3 ページ)
11月19日、エアバスの中型旅客機「A350」が、デモツアーのために初めて日本にやってきた。JALが導入したことでも話題のA350は、ゆとりのあるボディ&新素材を生かして乗客にも優しい機内環境を実現したという。その実際の乗り心地は……?
炭素繊維複合材をボディの53%に使用、機体を軽量化
D滑走路から北東へ向かった離陸したA350は、右回りで旋回して針路を西へ。富士山を右手に見ながら、伊豆半島上空を進む。
ボディ構造の53%に炭素繊維強化プラスチック(カーボン)素材が使われているのも、A350の特徴だ。その比率は、ボーイング787(約50%)を上回る。しかし、レドーム(アンテナなどを保護する先端の尖った部分)を除く機首部分は、従来機と同様にアルミ合金を使用。これは「炭素繊維ではバードストライク(上空での鳥の衝突)などの衝撃による被害を把握しづらい」(エアバス技師)ためで、主翼前縁なども同様にアルミ合金を使っている。
炭素繊維素材を多用したことで機体の軽量化を実現し、同サイズの従来機と比べて燃費効率を25%改善した。また、ボーイング787でも証明されたように、新素材を使った機体は乗客にもさまざまなメリットをもたらす(参考記事)。今回のA350の体験フライトにも湿度計を持ち込んだ記者がいたので、それを見せてもらうと巡航飛行中の湿度は「23%」。従来機では結露による金属疲労を避けるために機内に乾燥した空気しか送り込めなかったが、A350は787同様に“人に優しい”機内環境も実現した。
窓も大きい。ボーイング787の窓枠サイズよりは下回るものの、世界最大の総2階建て機A380を含め「エアバスのこれまでの旅客機のどれと比べても大きく設計した」と関係者は話す。朝夕などの時間帯に合わせた空間演出ができるLED照明の採用も、最新機種ではすっかり“定番”になった。
13時30分。A350は名古屋市の北部で左旋回し、向きを変えた。浜松上空から太平洋上に出て、伊豆大島を通過し、再び羽田へ。この日のフライトに同乗していたJALの植木義晴社長も「予想どおりの素晴らしい飛行機。運航を開始するときには、この機材に相応しい最高のシートを新しく完成させて、乗客の皆さんをお迎えしたい」と満足そうに話していた。離陸から着陸までわずか1時間ちょっとだったが、エアバステクノロジーの“先進性”を体感できるフライトだった。
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