金融・経済コラム
経済犯罪の取り締まりにうまくネットが活用できないか
先日、日経新聞の記事で、2005年7月から1年間の証券取引等監視委員会への通報が6割増加というものがありました。これは、不正に株価を動かす相場操縦、証券会社の強引な販売体制、有価証券報告書の虚偽記載、そしてインサイダー取引などについての不正をインターネット、電話、文書で監視委員会へ通報をするものです。ただ、今の人員では大量の通報を処理しきれない懸念もあるとのこと。
一方、企業においても、近年のコンプライアンスへの意識の高まりをうけて、社内の内部通報制度を充実させる企業も増えています。しかし、その一方で、内部通報をした社員が上司や周りの社員からイジメにあうなどの副作用も発生しており、なかなかスムーズに内部通報をできる立場にはありません。制度という枠組みだけ作ってみても、実効性に欠けます。
両方とも、確かに通報量は増えているのでしょうが、通報をするという行為は、なかなかハードルの高い行為であり、相当大きな正義感、憎しみ、嫌悪感などがないことには通報までには至りません。ゆえに、見逃されている事例の方が多いと思われます。また、取り締まる側(企業や証券取引等監視委員会)の体制が不十分であるがゆえに、タレコミネタを十分に調査しきれないということもあります。通報に依頼する体制であり続けるなら、自ずと限界があるのではないかと思います。
また、通報をしても、結局それを受け取った側が体制不備で対応してくれないのであれば、通報するインセンティブもあまり働きません。そこで、このようなビジネス界、金融界の不正を正すことに、インターネット、外部視点を用いると改善のスピードが進むのではないか、と思います。
先日も、ブログでバイクを盗んだことを自慢げに書いた人が、読者から犯罪だと指摘され、ネット界ではこの窃盗犯を割り出すための祭り(炎上)が行われ、最終的には住所、氏名、出身学校まで明らかにされるという始末になっていました。とかく、怖い、ネガティブな印象で語られることの多い、ネット内での書き込みや炎上ですが、このように犯罪を取り締まる効果も高まりつつあるようです。
このバイクの例でも、犯罪者にとっては盗むという行為が日常化してしまっているので、罪の意識がほとんどなくなってしまっています。金融界、ビジネス界における不正も、当事者は感覚が麻痺しており、中には、「会社のために良かれと思ってやったんだ」と言いのける場合もあります。
通報やタレコミは、当事者の思い込みや勘違いのケースもありますので、それらがダーッとインターネット上に出てくると、勘違いされて通報された側は風評被害を被ることになります。また、当事者企業や事情も全然知らないインターネットの向こう側にいる人達に、それらがクロかシロかを判断させるのは無責任、かつ危険ということにもなります。ただ、インターネットの向こう側の人達の一人ひとりの意見や判断は異なるのでしょうが、それらが群集になると、あながち考えは間違っていないことが多々あります。
企業や証券に絡む経済犯罪がますます複雑化、多様化し、それらが与える社会的影響が大きくなる現代においてに、不正がみすみす見逃されること、あるいは不正が肥大化してから発覚することの社会的ロスは大きく、企業や監視委員会にてキチンと取締りを強化できないならば、インターネットを活用した解決策も並立させることもアイデアとしてはアリなのではないかと思います。
逆に言えば、インターネットを活用しないことにはダメだ、と思われないぐらいに企業、監視委員会が実行力を持って不正に対応してくれていれば特に問題ありません。しかし、実際には、表に出てくる経済犯罪の量が少なすぎるという感覚を人々が持っているのが現状であり、不正を働いた人間が得をする社会であり続けると、日々働くことへのモチベーションが下がってしまい、それは大きな社会的ロスです。
特に、現在は、政府が国民に対して貯蓄から投資へと煽っていますが、煽るのであれば、投資の対象となる企業、証券界での不正を正すような仕組みを強化する必要性は大きくなっているはずです。どこかでこのような不正取締りサイトみたいなものが登場しないかなと思いますが、現状では2ちゃんねるがその存在価値で大きく抜きん出ています。最近いろんなノイズの多い同サイトですが、政府や社会が堂々と2ちゃんねるを褒め称える、そんな日が来たりするのかもしれません。
保田隆明氏のプロフィール
リーマン・ブラザーズ証券、UBS証券にてM&Aアドバイザリー、資金調達案件を担当。2004年春にソーシャルネットワーキングサイト運営会社を起業。同事業譲渡後、ベンチャーキャピタル業に従事。2006年1月よりワクワク経済研究所LLP代表パートナー。現在は、テレビなど各種メディアで株式・経済・金融に関するコメンテーターとして活動。著書:『図解 株式市場とM&A』(翔泳社)、『恋する株式投資入門』(青春出版社)、『投資事業組合とは何か』(共著:ダイヤモンド社)、『投資銀行青春白書』(ダイヤモンド社)、『OL涼子の株式ダイアリー―恋もストップ高!』(共著:幻冬舎)、『口コミ2.0~正直マーケティングのすすめ~』(共著:明日香出版社)。ブログはhttp://wkwk.tv/chou/
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