インタビュー
» 2007年08月09日 21時16分 UPDATE

達人の仕事術:“忘却力”で仕事する──404 Blog Not Foundの小飼さん

映画「バベル」のロケ地として自宅を提供した小飼弾さん。アルファブロガーとしても有名だが、一体どんな人物だろう。「自分の“忘却力”に信頼を置いている」という小飼さんの仕事術を紹介しよう。

[泉あい,ITmedia]

 ライブドア事件が活発に報道されていた頃、ライブドアの前身であるオン・ザ・エッジの取締役経験者として度々テレビ出演をしていた小飼弾さん。自身のブログ「404 Blog Not Found」では、アルファブロガーとして一目置かれた存在。有名な人だが、本職は一体何だろう。

st_dk00.jpg 高層マンションの一角にある、小飼さんの自宅。大きな書棚と見晴らしの良いベランダが印象的だった。ちなみに映画「バベル」のロケ地にもなった

 Wikipediaの小飼さんのページには、「日本のオープンソース開発者。個人資産管理会社、ディーエイエヌ有限会社代表取締役」とある。本人に直接聞くと、「仕事してないじゃないかという話があるのだけど。もう職業はないということにしておこうかな」と謙遜して笑う。「昼行灯」「穀潰し」などと自分を卑下して例えたりもするが、「今でも現役のプログラマーだ」とはっきり答えた。

最小限の動きで最大限のこと

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 小飼さんは自分の仕事を通信の「OSI参照モデル」に例える。OSI参照モデルとは、物理層、データリンク層、ネットワーク層、トランスポート層、セッション層、プレゼンテーション層、アプリケーション層の7レイヤに分かれたネットワーク構造の設計方針である。小飼さんが独特なのは「1から7じゃなくて0から8まで」というところだ。「サービスの仕様を決定するのがレイヤ0です。お客さんとやり取りをするのはレイヤ8ですね」。小飼さんの守備範囲は「OSI参照モデル+α」なのだ。

 仕事はイベントドリブン。仕事が発生すると、それに応じて必要な処理を行うやり方だ。仕事といってもお金になることも、ならないこともある。お金にはならなくても、何らかの形で別に得るものがある。だから、仕事とそれ以外というのは厳密に区別しないのだという。

 仕事には寝室を使うことが多い。最小限の動きで最大限のことがしやすい広さがお気に入りだ。何より、寝ていて何かが気になると、すぐに調べたい書籍に手が届くところがいい。毎朝の起床やデスクにつくなどの時間は決めていない。仕事らしい仕事は、週に2日から3日だけ。仕事、つまりイベントが発生しなければ、好きなイベントを発生させて、自分自身で受け取る。自分の好きなことを好きなようにやれる時間だ。「仕事のスタイルだと言い切れるものはなくて、仕事が来たらやる。必要なことを必要な時にやるという感じ。一日中やっていることもある」。書斎を持たないことを意外に感じたが、普段の生活と仕事に境目のない小飼さんのライフスタイルでは、寝室で仕事をすることが自然なのである。

スケジュールは“忘却力”で整理する

 誰かに会う約束など、人が絡むイベントは必ずMacのスケジューラ「iCal」にメモするが、それ以外は基本的にメモを取らない。大切な予定を忘れてしまうリスクがあるようにも思えるが、逆に自分の“忘却力”に信頼を置いている。大事なことだったら忘れるはずがないし、どうでもいいことであれば忘れる。いわば、脳の力でふるいにかけるのだ。「今のところ、忘却力に勝る情報整理ツールはない(苦笑)」

 忘却力に頼る小飼さんの仕事術は、GTDにも通じる部分がある。GTDとは「Getting Things Done」の略で、一言でいうと「頭をすっきりさせる仕事術」。小飼さんは、特に「Done」(完了したこと)を明白にするべきだという。「どういう状態を持ってそれが完了したかということを明白に定義すること。そうでないとDoneにしちゃいけない」。「小飼さん流GTD」は、迷いなくDoneと定義できるように、イベントをなるべく小さく分けること。そして、Done以外のもの、つまりまだ完了していないタスクは、ToDoに入れるのである。

 仕事が滞り始めると、大きな仕事を小さな作業単位に小分けにする。ToDoリストを明確にすることができるから、たまった仕事を期限までに終わらせられるというわけだ。

 そんな小飼さんも1日に30回から40回は仕事で“ミス”をするという。さすがに人生が終了してしまうようなミスではない。どちらかというと、「メールの返事をし損ねた」という程度のものではあるが、それらを「マイクロ挫折」と呼んでいる。片付くはずだった仕事がそのままになっている状況を“挫折”と意識し、対応することで、問題意識が高まる。ミスへの対応を意識して経験を積むことで、「こうやればうまくいく」という“ベストプラクティス”を蓄積できるのである。

st_dk02.jpg 仕事道具はシンプル。MacBook ProとNTTドコモのSH901iCを見せてもらった

中学でホームレス、16歳で大検、18歳でPC体験

 小飼さんは長野県諏訪で18歳まで過ごした。学校の授業は退屈だったという。中学生の頃、興味を持っていた東京へ何度となく家出した。泊まるところがなく、ホームレス同然の姿で新聞紙にくるまって眠ったこともある。大人になった今でも「その気になれば何でもできる」という気持ちを持っていられるのは、この頃の経験によるところが大きいという。

 16歳で大学入学資格検定、通称「大検」を取得。資格が有効になる満18歳になる年度まで、土木作業員や年上の受験生を指導する塾の講師などをやって働いた。18歳になる1987年、米国カリフォルニア州立大学バークレー校へ留学。最初は化学を専攻。データを処理するのにコンピュータを使ったら、面白くなってコンピュータサイエンスと応用数学に熱中した。

 インターネットも留学時代に初めて体験。見た目は現在のものは雲泥の差があるが、メールソフトや掲示板などは存在した。学校の授業に満足できなかった小飼さんがインターネットに出会うことで、知的好奇心の“渇き”を大いに癒したのだった。

 「好き放題」(小飼さん)やっていた米国留学時代。それも1991年の実家全焼で終わった。再建のため帰国し、フリーランスで翻訳の仕事を受けるなどして働いた。帰国後、まずは2400bpsのアクセスポイントを持つNIFTY-Serveに入会。パソコン通信を利用していた。

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 そして1995年、Windows 95が発売された年。小飼さんにとって、ネットワーク技術者という職業が決定的になった年でもある。「Windows 95が売り出された30分後に僕は、接続マニュアルをWebサイトに掲載していましたから」。その後、商用インターネット勃興期の各ISPで開発に携わり、一時はオン・ザ・エッジ(現ライブドア)の取締役として活躍したこともあった。

 「自分ではどうしようもないイベントも人生の中では起こってしまいます。火事のおかげで留学を中断することになりましたが、ビジネスを始めるきっかけにもなった。その時々でのイベントを挫折とも成功とも感じるであろうが、後になってみなくては分からないこともある」。小飼さんにとっての最も大きな挫折は、今では大きなビジネスチャンスだったと思えるようになっている。

 インターネットとの出会いが、直接的には小飼さんの人生に大きな影響を与えた。この出会いを助けたのは、小飼さんの飽くなき好奇心なのではないだろうか。人生の出会いは、その後を大きく左右する。自分にとっての出会いを見過ごさないための好奇心──。小飼さんはそんな好奇心を大事にしているように見えた。

プロフィール
お名前 小飼弾(こがい・だん)
プロフィール 1991年12月米カリフォルニア州立大学バークレー校中退。その後、帰国し、ネットワーク技術者として活躍。1996年ディーエイエヌを設立し、代表取締役に就任(現任)。1999年オン・ザ・エッヂ(現ライブドア)の取締役に就任するも、2001年に同社取締役退任。
PC MacBook Pro
携帯電話/PDA(データ通信カードを含む) NTTドコモSH901iC(auに乗り換えようか思案中)
デジタルカメラ ケータイカメラか妻のFinePix F30を適宜借りる
ブラウザ FirefoxときどきSafariまたはlwp
収集ツール(RSSリーダーなど) livedoor Reader
メールクライアント Mail.app
インスタントメッセンジャー チャットはあまり好きでないのであまり使っていない
よく使うショートカットキー -
ファイル整理ツール(デスクトップ検索を含む) Mac OSX そのもの
バックアップツール rsync
検索サイト Google
Webメール あまり利用していない
ブログ 404 Blog Not Found
SNS mixi/vox/nowa(ただしSNSとしての利用頻度は低い)
ソーシャルブックマーキング はてなブックマーク
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影響を受けた人/本/Webサイト Larry Wall
座右の銘 Si vis pacem, para bellum.
手帳/ノート 手前の脳
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