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» 2016年02月08日 08時00分 UPDATE

池田直渡「週刊モータージャーナル」:大改革が生んだボルボ新型XC90のシャシー (1/5)

日本でも先月発表となったボルボのフラッグシップモデルXC90。“微妙”なクルマだった先代から大規模な構造改革を実行。エンジン&シャシーに1兆3000億円もの投資を行ったという。

[池田直渡,ITmedia]

 2016年1月27日、ボルボはフラッグシップモデルXC90を発表した。と言ってもそれは国内の話で、欧州や米国では既に昨年発売されており、ネットでいくらでも海外の情報が入ってくる今、若干の今さら感はある。

ボルボのフラッグシップSUVとしてデビューしたXC90。先代と同様デザインは草食系。新型は大人しい中にも都会的な雰囲気を手に入れた ボルボのフラッグシップSUVとしてデビューしたXC90。先代と同様デザインは草食系。新型は大人しい中にも都会的な雰囲気を手に入れた

 ラインアップ最大の堂々たる体躯(たいく)を持つXC90の主要マーケットは、常識的に考えて北米であり、サイズ的に日本でポンポン売れるモデルではない。

 新型XC90に対する先行各国での評判は上々で、特に米国ではさまざまな賞を受賞している。2015年の推移を見る限り、販売台数的にも成功で、生産が追いつかない状態だという。ボルボによれば「クルマの奪い合いです」。それではと国内販売の目標台数を尋ねると「公式にはアナウンスしていません」とのこと。ポテンシャルで見て、年間1000台くらいの線だろう。あとは供給次第というところだと思う。

ヘッドランプには北欧神話のトール神がもつ雷槌(トールハンマー)がデザインされている ヘッドランプには北欧神話のトール神がもつ雷槌(トールハンマー)がデザインされている

SUVマーケット対決の構造

 さて、そもそも論に戻れば、SUVのマーケットとはどういうものだろうか? そのスタートラインは北米にある。本来はピックアップトラック派生の乗用車なのだが、セダンと比べ、そのカジュアルデザインの新しさと室内空間の豊かさが評価されて、後に大きなジャンルに発展した。

 SUVは何とも実態のつかめないクルマで、ハードウェアの構成要素では明確に定義できない。ただし、長らくそこにオフロードでの一定の走破性能が期待されていたのも事実だ。スポーツユーティリティビーグルと言う名前の通り、スキーやサーフィンなどで雪路や砂浜などに分け入る可能性があったからだと思われる。さらに北米ではキャンピングカーをけん引する役割もあり、そもそもがトラックベースなのも加わってタフさが求められる。その結果、大きく重い。当然、加速性能や旋回性能は鈍重になるわけだ。

 しかしながら、SUVの支持が拡大するにつれ、そうしたアウトドアライフのツールでなく、ごく普通に乗用車として使われることが多くなった。そうなると軽快さを求める比率が上がっていく。その結果、スタイルだけは自由さを象徴するSUVで、中身はもっとゴージャスで快適な乗り心地を求めるというニーズが生まれた。

 そこに登場したのがBMW X5である。5シリーズセダンのシャシーをベースにかさ上げして作られたX5は、それ以前のSUVとは隔絶した良路性能を持っていた。こうしてX5は北米で一大勢力となったSUVをトラック・ベースからより洗練されたセダン・ベースへとシフトさせ、国際的な商品として再定義する役割を果たした。

 悪路に踏み込まない都会派のSUVという現実的商品としてX5は生まれ、SUVを高付加価値、つまりメーカーにとって儲けの大きな商品へと進化させた。以後、X5は世界の自動車メーカーからSUVのベンチマークとして開発目標にされていくのである。ただし、SUVは人によって求めるものが違うので、X5だけが最適解ということにはならない。例えば、この高級SUVマーケットにはクロスカントリーの側からレンジローバーが加わって一大勢力を築いている。トラック・ベース、セダン・ベース、クロカン・ベースという具合に、SUVには非常にスイートスポットの広い商品群ができ上がっていったのだ。

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