財政破たんから3年、デトロイト再生に取り組む起業家は何をしているのか事例に学ぶ、地方創生最前線(1/3 ページ)

» 2016年03月11日 08時00分 公開
[石川孔明ITmedia]

 かつて世界最大の工業都市として繁栄を謳歌(おうか)した米国ミシガン州デトロイト。自動車産業の凋落とともに急激な人口減少と治安の悪化に見舞われた同市では、再生のためのさまざまな取り組みが進められている。


 米国北東部、五大湖のほとりに位置するデトロイト。この街の愛称は「モーター・シティ(自動車の街)」。1903年のフォードによる自動車工場の設立を皮切りに、ゼネラル・モータースやクライスラーなどの巨大企業が次々と誕生、世界最大の工業都市へと成長した。

 全国から労働者が集まり、1950年代には人口180万人を突破。その約半数が自動車関連の労働者であった。しかし1970年以降は安価で高性能な日本車の台頭を受けて徐々に産業が衰退。人種間対立による治安悪化も人口流出に拍車をかけ、2012年には最盛期の4割となる約70万人まで減少した。

かつて自動車の車体を製造していた巨大な工場。こうした廃墟が街のあちこちに点在している

 デトロイトは「犯罪都市」としても有名だ。フォーブスによる全米の危険都市ランキングでは毎年不動のトップである。多発する犯罪と自治体財政の悪化により、警察が連絡を受けてから現場到着までの所要時間は約1時間と、全米平均の11分を遥かに上回る。結果として事件解決率も約10%にとどまり、全米平均の30%に全く及ばない。

 治安の悪さを象徴するのが「デビルズ・ナイト(悪魔の夜)」だ。デトロイトではハロウィーンの夜に暴徒が家々を放火してまわるという危険な風習(?)があり、1970年代にはハロウィーンの期間だけで毎年500件以上の放火があった。人口減少にともなって空き家が大量発生したデトロイトだが、放火跡があまりにも多いため意外と空き家が目立たないほどだ。

放火により焼け落ちた住宅。かつて住宅が立ち並んでいた一帯は、まるで公園のようになっていた

 人口減少と財政悪化には歯止めがきかず、デトロイトは2013年に1兆8000億円の負債を抱えて財政破たんを宣言した。貧困世帯の移動手段であった公共バスは大幅に削減され、ゴミ回収の頻度も大幅に減った。約半世紀をかけて発展したデトロイトは、ほぼ同じ年月をかけて衰退し破たんするに至った。

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