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» 2016年03月25日 10時30分 UPDATE

宇宙ビジネスの新潮流:生命の痕跡を探せ! NASAで火星探査ロボット開発をリードする日本人 (1/2)

NASAの中核研究機関で火星探査ロボットの開発に従事する新進気鋭の日本人をご存じだろうか。今回はそんな若者の取り組みを紹介する。

[石田真康(A.T. カーニー),ITmedia]

 以前の連載で、「地球外生命体」と「火星移住」を研究する日本人としてNASA(米航空宇宙局)の客員研究員、藤島皓介さんを紹介した。今回はNASAの中核研究機関であるJPL(Jet Propulsion Laboratory=ジェット推進研究所)で、火星探査ロボットの開発をリードしている新進気鋭の日本人、小野雅裕さんに話を聞いてきた。その内容をお伝えしたい。

NASAの中核研究機関であるJPLで働く小野雅裕さん NASAの中核研究機関であるJPLで働く小野雅裕さん

海王星探査で宇宙に興味

 私の宇宙の原点は7歳のころに見たボイジャー2号による海王星探査です。父親がいわゆるスペースギーク(宇宙オタク)だったので、その影響はあったのですが、あのときのNHKのテレビ映像が今でも心に焼き付いています。NHKに感謝です(笑)。今働いているNASAのJPLの名前を初めて知ったのもこのときでした。

 それ以来、宇宙への夢を抱いてきました。私たち人類は1つのエコシステムしか持っていないわけですが、「私たちはどこから来たのか」「そもそも生命現象は必然か、偶然か」「生命現象は普遍的な現象なのか」といった究極の疑問を持つようになり、いつしか、地球外生命体の発見に貢献して、人類の科学の歴史に名前を残したいと思うようになりました。

 とはいえ、実は米MIT(マサチューセッツ工科大学)在籍時代には、自分のやっている基礎研究がいったい何に生きるのかということに悩み、やっていることが子どもじみて見えてしまい、宇宙に批判的になった時期もあります。しかし、友人に連れられて山崎直子さんが搭乗したスペースシャトルの打ち上げを見に行った際に、涙があふれ出てしまい「やっぱ自分は宇宙が好きなんだ!」と気付き、迷いが立ち切れて、ダークサイドから帰還しました。

フォン・カルマン講堂にて展示されているボイジャーの実物大模型 フォン・カルマン講堂にて展示されているボイジャーの実物大模型

生命の痕跡を探す火星探査ローバーの開発

 JPLの仕事は基本的にプロジェクトベースで行われており、複数プロジェクトに所属する人が数多くいます。プロジェクトにもいろいろと幅があり、スペースクラフト(宇宙機)を開発し、実際に打ち上げるような探査プロジェクトから、極めて基礎的な研究プロジェクトまで多岐にわたります。私も双方のタイプのプロジェクトに参画しており、半分程度の時間を使っているのが1年半ほど前から参画した「Mars 2020 Rover」です。

 これはNASAの火星探査プロジェクトを担うローバー(無人走行車)の開発です。今回の探査の目的は30億年ほど前にいた生命の痕跡を探すことです。ローバーには2つのミッションが与えられる予定で、1つは火星表面に降り立ち、現地でサンプルを回収して組成分析を行うこと。もう1つは、いわゆるサンプルリターンであり、火星の土を地球に持ち帰ってくる一連のミッションの、第一段階となる構想です。

 全体で数百人がかかわる巨大プロジェクトですが、私自身はMission Systems Groupという30人くらいのチームに所属しており、その中でも「Mars 2020 Traceability Tool=MTTTT」と自ら名付けたソフトウェアツールの開発をリードしています。これはローバーが火星着陸後にどのように走っていくかという経路設計とそのためのソフトウェアやアルゴリズム開発になります。イメージとしては火星版のGoogle mapを作成し、そこにナビゲーション機能を持たせたソフトウェア開発のイメージでしょうか。

 火星での着陸地点を決めるにもさまざまな要素が入ります。ローバーの動ける範囲には限りがあります。その中で、科学的観点からの面白さと技術的観点からのローバー走行の安全性から、攻めすぎず、守りすぎずに着陸地点を決めていくのです。着陸後にも、ローバーをどのように走らせると、どういう確率でどういう経路を走ることができるか、不確実性なども踏まえた上で、そのシミュレーションを行っていくことを担当しています。

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