ヨーロッパでも過熱化 衛星観測ビッグデータをどう利用する?宇宙ビジネスの新潮流(1/3 ページ)

» 2016年04月08日 08時30分 公開

 これまで主に米国の話題が注目を浴びていた衛星観測ビッグデータや衛星システムの利活用だが、2016年に入り欧州の動きが活発化している。ESA(欧州宇宙機関)、ソフトウェア大手のSAP、航空宇宙大手のAirbus(関連記事)などがさまざまな取り組みを進めているのだ。

衛星データをクラウドプラットフォームに展開

 衛星観測ビッグデータの利活用について、2015年に米政府系機関NOAA(米海洋大気庁)がビッグデータプロジェクトとして、IT大手5社(米Google、米Amazon Web Service、米IBM、米Microsoftなど)と、相次いで提携したことを記憶する読者も多いだろう。背景には2014年に米政府が立ち上げたClimate Data Initiativeがあり、NOAAの保有データを活用して、企業の意思決定プロセスやアプリケーション、製品、サービスを高度化していくことが目的だ。

 今年2月には、同じような枠組みが欧州でも誕生した。ESAがSAPとの間に、膨大な地球観測データの迅速かつ効率的な活用のためにLOI(Letter of Intent)を締結した。ESAが進める地球観測プログラム「コペルニクス」による衛星観測データは膨大になるため、従来技術ではデータ処理が難しい。そこで今回、SAPが提供するクラウドプラットフォーム「SAP HANA Cloud」を活用して、データ処理・解析の革新的アプローチを構築するのだという。

コペルニクスで運用される衛星「センチネル」のイメージ(出典:ESA) コペルニクスで運用される衛星「センチネル」のイメージ(出典:ESA)

 また、ESAとSAPはこれまでにも共同でアプリ開発キャンプというイベントを行ってきて、スタートアップ企業の取り組みなどを支援してきた。今回の取り組みを通して、より多くのスタートアップ企業、アプリケーションベンダー、SAPクラウドユーザーがESAの衛星観測データにアクセス可能になることで、小売、建設、農業、気象などの分野で新たなアプリケーション開発を促進することが期待されている。

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