野球評論家の張本勲氏は、なぜ失言を繰り返すのか赤坂8丁目発 スポーツ246(3/5 ページ)

» 2016年05月12日 08時00分 公開
[臼北信行ITmedia]

張本氏は偉大な選手だった

 「あそこまでズバズバとモノを言える人は今の世の中、そうなかなかいない。そのスタンスが不変だから、TBSも面白がって張本さんに何も注文をつけることなく、起用し続けているんだと思います。ネットで取り上げられて話題にもなるし、いわば『炎上商法』みたいなものでしょう。

 でも、さすがにやり過ぎですよ。百歩譲って野球界のことに何か物申すならばまだ許せますが、他のスポーツや野球とまったく関係ない人にまでイチャモンをつけるのは明らかに範ちゅうを超えている。これはプロ野球界に生きる僕らにとっても非常に迷惑な話なんです。

 実際にレスター・シティに関する問題発言があった直後、僕は仲のいいJリーグに所属する選手から『オマエも張本さんと同じ考えなのか。よその国のことだから関係ないって思っているのか』と大マジメな顔を浮かべながら聞かれたことがありました。非常にショックを受けましたよ」

 A選手は明らかに怒っていた。ただし「張本さんが昔、実はすごい選手だったことは今の若い世代の人……特に野球界と無縁の若い人たちはほとんど知らないと思います。だから僕が残念だなと痛感しているのは張本さんがこういう問題発言をテレビに出て繰り返すたびに、自分の築き上げてきた過去の栄光に泥をどんどん塗っていってしまっていくことです」と付け加えることも忘れなかった。

 そう――。確かに張本氏は偉大な選手だったのだ。1959年から1981年まで日本ハム、巨人、ロッテと3球団を渡り歩き、現役23年で日本プロ野球史上最多となる通算3085安打を達成。日本プロ野球において3000本安打、500本塁打(504)300盗塁(319)をクリアした選手は張本氏ただ1人である。

 そんな栄光の経歴を築き上げた人物が一体なぜ「頑迷固陋(がんめいころう:頭が古くかたくななさま)」を地で行く性格になったのか。球界OBに取材を重ねてみると、そこには張本氏の経験した過去の苦難の連続が大きく関係しているように思えた。

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