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» 2016年10月03日 06時30分 UPDATE

池田直渡「週刊モータージャーナル」:ダイハツの女性仕様車にまだ足りないもの (1/4)

ダイハツの軽自動車「ムーブ・キャンバス」は女性ターゲットのクルマだという。確かに両側電動スライドドアなど女性の使い勝手を考えた便利な機能が備わっているが、一台のクルマとして本当に女性の喜ぶものになっているのだろうか?

[池田直渡,ITmedia]

 ダイハツは、両側電動スライドドアを備えた軽自動車「ムーブ・キャンバス」を9月7日に発売した。

ダイハツの新型車、ムーブ・キャンバス。価格は118万8000円から166万9000円 ダイハツの新型車、ムーブ・キャンバス。価格は118万8000円から166万9000円

 2015年4月の軽自動車税改定まで、軽自動車はいわゆるダウンサイジング・ムーブメントに乗って、白ナンバー(登録車)からの乗り換え需要で賑わっていた。これまで軽自動車に興味を示さなかった男性ユーザーが新しい顧客としてマーケットに流入してきたのである。

 ところが、増税の影響は大きく、軽自動車販売の勢いが止まって、ずるずると落ち込みを続けている。次のターゲット顧客を真剣に模索しないと、販売台数の落ち込みに歯止めが効かない。ダイハツは2015年、対前年比で約15%の台数減。スズキは約20%落ち込んでいる。2016年はその悪かった2015年からさらにそれぞれ5%、10%ほど落ち込んでいる。

 そこで、ここ数年の男性顧客偏重路線を改め、手薄になっていた女性のニーズをもう一度喚起したいと考えたのだと言う。調査してみると、人口ピラミッドで見て期待のできる団塊世代ジュニアの後ろ半分、年齢的に見て30代のうち晩婚化の影響を受けた独身女性のポテンシャルが高いことが分かった。

 親と同居で可処分所得が高く、必要なら、親からクルマの購入資金の援助が受けられる。「何が何でも安く」というより「気に入ったものには多少お金をかけたい」という、消費性向の高い層なのだという。断っておくが、筆者が言っているのではない。これはダイハツの言い分である。

 さて、その層が本当にクルマを買うのかどうかはちょっと分からないが、いずれにしてもダイハツのこのムーブ・キャンバスはそうした女性に向けて開発されたクルマということになる。

両側スライドドアの意味

 一体どこが女性向けなのかと言えば、両側電動スライドドアが一番の目玉だ。ダイハツではクルマの利用実態をしっかり調べたらしい。その結果、後部座席に買い物などの荷物を収容して運転席に座るという一連の動作に着目した。

インテリアのデザインはチープ感がなく、かと言ってオーバーデコレート感もなく好感が持てる インテリアのデザインはチープ感がなく、かと言ってオーバーデコレート感もなく好感が持てる

 買い物から戻って来て、駐車場で隣のクルマにドアをぶつけることを気にせずに、ワンタッチで電動スライドドアを開けて荷物を積み込む。リヤシートの下には引き出し式の物入れが備わっていて、普通に収容する以外に、引き出したまま四囲に丈の高い間仕切りを立てて、バスケットのように買い物袋を置いておける。クルマを走らせても荷物は転がらない。なるほど。

女性の求める使い勝手をリサーチした結果採用された両側スライドドア。上位モデルではスマートキーと連動してワンタッチで電動ドアの開閉ができる 女性の求める使い勝手をリサーチした結果採用された両側スライドドア。上位モデルではスマートキーと連動してワンタッチで電動ドアの開閉ができる

 リヤシートに荷物をしまえれば、運転席の乗り降りのときは身軽になり、ヒンジ式ドアの開閉に気を遣う余裕ができる。そう言われればその通りで、両手に荷物を抱えた不自由な状態で後席ドアを怖々開けていたときと比べれば確かに使い勝手は良いだろう。

シートの下には、一部モデルを除き「置きラクボックス」と名付けられた引き出しが付く シートの下には、一部モデルを除き「置きラクボックス」と名付けられた引き出しが付く

 というところまで書いてから基本に戻る。ダイハツのクルマ作りは真面目だと思う。女性マーケットを大事にするとは何なのかという点について、少なくともケーススタディがそこにある。少なくともムーブ・キャンバスが、「色柄を可愛らしくしとけばいいだろう」という適当な商品でない点は評価できる。もっとも日本の自動車メーカーは、過去に例外なくそういうこともやってきた。「キャラクターやブランドとコラボして一丁上がり」の安直な女性仕様だ。もちろんダイハツもその道を通ってきた。今回のムーブ・キャンバスは少なくともクルマの端々を見る限り、ちゃんと調べ、考え、良かれと思って機能を考えた。少なくともPDCAサイクルの前半部分は機能しているように思う。

 PDCAサイクルとは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)という一連のサイクルであり、継続的に製品を進化させていくために欠くべからざる管理手法である。その後半がどうなのだということが本稿のテーマなのだが、その前にもう1つ説明しておきたいことがある。

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