地方の公務員が送った米を、なぜローマ法王は食べたのかスピン経済の歩き方(1/4 ページ)

» 2016年11月15日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

スピン経済の歩き方:

 日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。

 「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。

 そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」を紐解いていきたい。


 2016年3月に定年退職をするまで石川県羽咋市(はくいし)の職員だった高野誠鮮(たかの・じょうせん)さんという方をご存じだろうか。

 「誰それ?」という人も、「ローマ法王に米を送って、それを食べてもらった男」と言えば思い浮かぶ人も多いのではないだろうか。深刻な過疎高齢化に悩む神子原地区を立て直すために、地域で生産される神子原米を、ローマ法王に献上し、見事ブランド化に成功。ほかにも周囲から不可能だと言われるアイデアを次々と実行に移し、限界集落を蘇らせた「スーパー公務員」として知られ、TBSドラマ『ナポレオンの村』のモデルにもなった御仁である。

 定年退職後も、総務省地域力創造アドバイザーをつとめらたり、農薬・化学肥料不使用の自然栽培米(ジャポニック)の普及に尽力されたりと精力的に活動している。

 そんな高野さんが、ビジネス本を出版された。『頭を下げない仕事術 「頼まない」で人を動かす24の方法』(宝島社)である。タイトルだけを見ると、「どんな仕事でも頭を下げてナンボだろ」なんてさまざまツッコミが寄せられるかもしれない。なかには、「煽り気味のタイトルで中身は違うってパターンじゃないの」と穿(うが)った見方をされる方もいるだろう。

 だが、このタイトルに偽りはない。本書には文字通りに「頭を下げない」「頼まない」で仕事や人を動かす方法が収められている。しかも、それらは論理などではなく、すべて高野さん自身が仕事で用いてきたものなのだ。それは、なんと彼の名を一躍世に知らしめたあの「ローマ法王への神子原米献上」でも使われたという。

「頭を下げない」「頼まない」仕事術とは(写真はイメージです)
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