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» 2016年12月26日 06時45分 UPDATE

池田直渡「週刊モータージャーナル」:それでいいのかホンダ!? (1/4)

ホンダが中国で新たな工場を建設する。これは白紙撤回されたはずの600万台体制の計画の一部だと筆者は見ている。しかし、ホンダが今やるべきことはほかにあるはずではないだろうか……。

[池田直渡,ITmedia]

 12月8日、ホンダは中国における四輪生産販売合弁会社「東風本田汽車有限公司」による第3工場の建設を決定し、起工式を行った。

 余談だが、中国で自動車を作ろうとすると現地資本との合弁会社を作らざるを得ず、かつ現地資本に51%の株式を持たせなくてはならないのが法的な原則である。原則と言うのは、経済特区だなんだとさまざまな抜け道があり、共産党の中枢部と太いパイプがあれば、できないはずのことができたりする。フェアにやっていたのでは埒(らち)があかない世界があるらしい。

ホンダの中国合弁企業である東風本田汽車有限公司の第2工場。これに加えて新たに第3工場の起工式が行われた ホンダの中国合弁企業である東風本田汽車有限公司の第2工場。これに加えて新たに第3工場の起工式が行われた

 さて、主題はこの凍結していた中国工場建設の再開である。これは2015年7月の八郷隆弘社長就任後の所信表明演説で白紙撤回されたはずの600万台体制のプランの一部復活と筆者は見なしている。八郷社長は600万台体制について「販売力が追いつかない」と述べ、新たな方針について、商品力重視でホンダらしさを取り戻すと宣言していたはずである。

 つまり、常識的に考えれば、新工場設立の凍結解除は何らかの問題が解決して、増産体制に向かえる環境が整ったということになるはずだ。何も問題がなければ、600万台計画は取り下げる必要がなかったからだ。本当にこの1年で、販売力が飛躍的に向上したのだろうか? ホンダに正式に質問すれば600万台プランの復活とは答えないだろう。あくまでも過去のプランとは別に販売実績に鑑みて生産設備の増強が必要なのだと答えるだろう。それはウソではないかもしれないが、ホンダには生産設備拡大への執着が根強く残っているのではないか? だから自身でも気付かないうちに、ことあるごとに工場建設へと引っ張られているのではないだろうか?

数字と言葉、その裏側に見えるもの

 その販売実績を見てみよう。ホンダは2015年度に474.3万台の四輪車を販売しており、同年3月期の決算時には2017年3月期(2016年度)の販売見通しを491.5万台としている。17万2000台、3.6%の台数増ということになる。これに対し、2016年1〜10月の累計実績を参照してみると積算の方法が違うらしく、約413.1万台で前年比110%となっている。とりあえず110%の方を信じるとすれば、なるほどホンダの販売力は向上しているように見える。

武漢第2工場の組み立てライン。ホンダの場合、中国には広東と武漢にそれぞれ工場を持っている。武漢のキャパシティが12万台増えると、広東・武漢の合計はそれぞれ60万台で拮抗(きっこう)する 武漢第2工場の組み立てライン。ホンダの場合、中国には広東と武漢にそれぞれ工場を持っている。武漢のキャパシティが12万台増えると、広東・武漢の合計はそれぞれ60万台で拮抗(きっこう)する

 新工場の生産能力は12万台とされている。前述の1〜10月の累計を見る限り、グローバル生産台数が110%であるだけでなく、地域別に見てもほとんどのエリアで伸ばしている。特に中国の126.2%とアジアの117.4%は目を引く。

ホンダの国内外での生産能力 ホンダの国内外での生産能力

 次いで伸ばしているのは意外にも巷間に不振が伝えられている日本マーケットの112.3%だが、これはあくまでも生産ベースであり、輸出を含んでいるので、国内販売に直結するわけではない。同じくホンダが長年伸び悩みに苦しんでいる欧州も106.2%と好調だ。逆に台数を落としているのは「その他」でまとめられているエリアの83.4%で、消去法で見るとアフリカとトルコということになるだろう。表を確認してもらえればお分かりいただけるように、どちらも総生産台数におけるインパクトは小さく、影響は限定的だ。

 確かに中国での生産力の増強は数字を見る限り妥当とも思える。しかし、話を根底から見直してみたときに、本当に600万台計画の白紙撤回原因は販売力が原因だったのだろうか?

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