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» 2017年02月06日 10時50分 UPDATE

海賊版とダフ屋があっても伸びる:「コケても興収10億円」中国映画の急成長 (1/3)

「君の名は。」の中国展開が好調だったが、実は中国の映画産業は、年々成長を続けている。中国の映画産業に何が起こっているのか? 中国とビジネスをしていくうえでどんなことが必要とされるのか? 「君の名は。」の中国展開を担った柏口之宏代表取締役に聞いた。

[青柳美帆子,ITmedia]

 アニメーション映画「君の名は。」が、世界各国で記録的なヒットを飛ばしている。中国では12月2日に公開、開始16日間で5.34億元(約90億円)と海外アニメ映画の歴代新記録を樹立した。

 日本の映画市場規模は約2000〜2300億円。16年は邦画が好調で過去最高になる見通しだが、ここ数年は横ばい状態にある。予算を潤沢に使ったオリジナルの大作はあまり手がけられなくなり、低予算映画、テレビドラマの映画化作品、漫画の実写化映画などが目立つ。こうした状況下で、海外で日本作品がヒットすることは、ビジネス的にも大きな意味を持つ。

 実は中国の映画産業は、年々成長を続けている。今、中国の映画産業に何が起こっているのか? 中国とビジネスをしていくうえでどんなことが必要とされるのか? 「君の名は。」の中国展開を担ったアクセスブライトの柏口之宏代表取締役に聞いた。(「君の名は。」中国展開の秘話についてはこちら

成長を続ける中国。映画市場も大きく伸びている

制作委員会がなく、“コケても興収10億円”

 他国を大きく引き離して世界2位。14年は6000億円、15年は8000億円、16年は9000億円程度の着地となる見通し――それが中国映画市場。成長を大きくけん引しているのが国産映画だ。

中国映画市場は成長を続けている(グラフは14年までのデータ)。16年はやや伸び悩んだが、米国に次いで世界2位の市場だ(=JETRO)

 日本は興行収入10億円を超えればヒットとされるが、中国は人口に比例して市場も大きく、またチケットも安いため、“コケても興収10億円”。多少失敗しても回収できるという考えから、そもそもの制作費の規模が大きく、新たな作品が生まれやすくなる構造ができつつある。

 さらに日本と大きく違うのは、制作委員会方式がないことだ。制作委員会方式とは、日本の映画制作の多くで採用されている、幹事企業が出資を募り複数のスポンサー企業を得る方式。単独企業で手がけた場合に比べファイナンスがしやすく、制作費回収のリスクを抑えられるプラス面があるが、作品の方向性が散漫になる弊害も指摘されている。

 中国には制作委員会方式がない。そしてアニメ作品では、1人の作家が莫大な時間と労力をかけて作品を作るケースが続いている。15年に公開し記録的な興行収入となった「西遊記之大聖帰来(Monkey King: Hero is Back)」は6年間、16年公開の「大魚海棠(Big Fish & Begonia)」は12年間をかけて作り上げた大作だ。

16年に公開し、映像美で話題となった「大魚海棠(Big Fish & Begonia)」

 「『大魚海棠』の梁旋監督は、脱サラして映画制作を始めました。途中資金が尽き、クラウドファンディングで出資者を募り、16年についに完成させました。日本でも、クラウドファンディングを活用した劇場アニメ『この世界の片隅に』がロングヒットしていますが、自分たちの魂を入れた作品はやはり支持されますね」

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