コラム
» 2017年04月05日 06時00分 UPDATE

新連載・夏目幸明の“経営者論”:経営者の口癖には共通点がある (1/2)

言葉は心を映す鏡だ。ときに心は言葉に操られることがある。また、一流の人間の言葉を記憶に刻めば、その一端は確実に血肉になる。数多くの経営者を取材してきた筆者が、自分の明日を良い方向へ変えるヒントとなる経営者の言葉を紹介する。

[夏目幸明,ITmedia]

「それは、ちょうどいい」

著者プロフィール

夏目幸明(なつめ・ゆきあき)

1972年、愛知県生まれ。早稲田大学卒業後、広告代理店入社。退職後、経済ジャーナリストに。現在は業務提携コンサルタントとして異業種の企業を結びつけ、新商品/新サービスの開発も行う。著書は『掟破りの成功法則』(PHP研究所)、『ニッポン「もの物語」』(講談社)など多数。


 いわば、人生は「NO」の連続だ。大抵、自分の思いがそのまま実現することはない。人に仕事を頼めば思ったものはあがってこず、会社のために良かれと思った提案は却下され、取引先は小さなことで怒りだす。うんざりすることに、経営者になっても同じらしい。

 ビール製造メーカー、ヤッホーブルーイングの井手直行氏が社長に就任したとき、「チームビルディング」(仲間が思いを一つにして、一つのゴールに向かって進んでゆける組織づくりのこと)を最重要課題とした。組織力を強化するための研修を始めたが、参加者は少なく、多くの社員から「なんでこんな忙しいときにどうでもよさそうなことをするんだ」と、ブーイングの嵐を受けたという。

 腐ったり落ち込んだりすることは簡単だ。だが、井手社長は物事が思うようにいかないとき、いつも「それは、ちょうどいい」と口にする。どういうことか。

photo 井手社長物事が思うようにいかないとき、いつも「それは、ちょうどいい」と口にする(写真はイメージです)

 「仮にあなたが小学校の先生だったとします。朝、学校に行ったら校門が開かない。子どもたちや他の先生は騒ぎ出し、係の人に電話をしても反応はありません。この場面、どうしますか?」(井手社長)

 まず、校門係に連絡を取ろうと何度も電話するだろうし、その人を責めるだろう。しかし井手社長によれば「それは、ちょうどいい」らしい。

 「結局、どんな場面でも、最適解は一つじゃないんです。目の前に自分の思いを阻むものがあれば、それは別の道をさがすチャンスなんです。先の例なら、思い切って屋外授業に切り変えればいい。すると、良い意味で想定外のことも起きる。屋外授業を通し、クラスの子どもたちが仲良くなるかもしれません。自然の美しさに気付く子がいるかもしれません。きれい事でなく、現実もそうなんです」

 「例えば当社の社員が取引先の小売店さんとトラブルを起こしたときです。落ち込む社員に、僕は『これ、ちょうどよくなるよ!』と話しました。まず、今まで問屋さんを通してしか話せなかった小売店さんの意見を直接うかがう良い機会だと考えました。謝りに行けるわけですからね(笑)」

 研修の話も同じで、「納得しない社員を説得する技術を身につけられた」という。これは単なる「ポジティブ」ではない。さまざまな場面で、さまざまな「NO」を突きつけられることなど、とっくに“彼の予定に入っている”ということなのだ。

 「人生は塗り絵のようなものです。塗り絵は図柄を変えることはできず、同じように、起きたことは誰も変えられません。でも、それにどんな色を塗るかは、受け取る人間次第なんですよ」

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