マスクとベゾス、二大巨頭が挑む宇宙アクセス革命宇宙ビジネスの新潮流(1/4 ページ)

» 2017年04月07日 08時10分 公開

 カリスマ経営者、イーロン・マスク氏率いる米SpaceXが3月30日18時ごろ(現地時間)、第1弾ブースターを再利用した大型ロケット「Falcon9」による打ち上げサービスに初めて成功した。これは歴史的快挙だ。

 また、同じく3月には米AmazonのCEOであるジェフ・ベゾス氏率いる米Blue Originが開発中の大型ロケット「New Glenn(ニューグレン)」の詳細を公開した。マスク氏とベゾス氏、米国西海岸の二大巨頭による宇宙アクセス革命が一気に加速しているのだ。

第1弾ブースターを再利用した大型ロケット「Falcon9」打ち上げ(出典:SpaceX) 第1弾ブースターを再利用した大型ロケット「Falcon9」打ち上げ(出典:SpaceX

第1段ロケットの再利用に成功

 今回、SpaceXが打ち上げのために再利用した第1弾ブースターは昨年8月に国際宇宙ステーション向けの物資輸送サービスに活用されて、打ち上げ・分離後に、自動で洋上ドローンに着陸した機体だ。その後4カ月間の試験やテストを経て、今回再利用された(同社のショットウェル社長によると、究極的には修繕時間を1日まで減らしたいとのこと)。なお、SpaceX自体は再利用という表現ではなく、“flight-proven rocket(打ち上げ実証済みロケット)”としている。

 初めて成功した第1弾ブースターの再利用だが、今年中にさらに6回の再利用が計画されている。そのうちの2回は、今回も顧客となった衛星通信大手欧SESのための打ち上げサービスだ。

 また夏ごろに初打ち上げが予定される大型ロケット「Falcon Heavy」の両サイドブースターにも活用される。2018年は12回の再利用ミッションを計画しているとの報道もある。

4つ目の射場計画で、打ち上げ頻度を拡大

 再利用ロケットとともに、SpaceXが近年取り組んでいるのが、打ち上げ頻度の向上だ。ショットウェル社長は「究極的には2週間に1度の打ち上げをしたい」と公言している。顧客にとっては打ち上げ価格とともに、打ち上げの頻度と時期も重要だ。昨年9月にSpaceXが地上爆発事故を起こして、打ち上げスケジュールが大幅に後ろ倒しになってしまった際には、一部の顧客が別の打ち上げ機会を探すという事態が起きた。

 頻度拡大のために重要なのが、複数の射場(ロケットの打ち上げをする場所)だ。SpaceXは既に3つの射場――ケープカナベラル空軍基地、ケネディ宇宙センター、ヴァンデンバーグ空軍基地――を運用しており、個々の射場の特徴に合わせた打ち上げを行っている。さらに2018年の運用開始を目標にテキサス州のブラウンズビルに4つ目の射場を計画中だ。同射場は将来計画されている火星への打ち上げを見越している。

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