東京都政「時差Biz」は「都民ファースト」ではない杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/4 ページ)

» 2017年08月25日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 「クールビズ」は良くも悪くも定着した。汗かきの私にとって、「上着なし、ノーネクタイ」を堂々と実践できて良かった。しかし「室温28度」はつらく、自宅では無視した。2017年5月ごろになって、当時の環境省担当課長だった盛山正仁副法相が「なんとなく決めた」と言い出し騒動になった。結局、28度に根拠はあるけれども、それは労働環境で超えてはいけない温度、つまり上限であるというカタチに落ち着いたようだ。「室温は28度」が、いつの間にか「エアコンの設定温度は28度」と誤解されて広まったというオチだ。

 28度の根拠だ法令だという真偽はともかく、「クールビズ」の影響は大きかった。さて、この夏、似たような語感のキャンペーンがあった。「時差Biz」だ。東京都知事選挙で「満員電車ゼロ」を掲げた小池百合子都知事の公約実行だ。素晴らしいじゃないか。日ごろ、満員電車でつらい思いをしている人々は「時差Biz」に期待したことだろう。

photo 時差Bizは結局、乗客への掛け声だけ。「施策」ではなかった(「時差Biz」公式Webサイト)

 しかし、フタを開けてみたらどうだろう。鉄道の乗客に対して「朝早く起きて通勤しましょうね。ご褒美もあるかもよ」、企業に対して「社員さんが時差出勤できるように配慮してあげてね」という、ただの声かけ運動に終わった。そう、終わったのだ。時差Bizキャンペーンは7月11日から25日まで。結果としては今までと何も変わらない。

 クールビズは夏のノーネクタイを普及させてくれたけど、時差Bizで満員電車は解消できたか。満員電車対策にはなっていない。少しは早朝出勤の心地よさを発見した人はいただろう。現在、時差Bizキャンペーンサイトでアンケートを実施中だから、ぜひ回答してあげてほしい。結果や効果が可視化されないと、事務局や参加企業の担当者が気の毒だ。

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