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» 2017年08月29日 11時00分 公開

専門家が指摘:「ガバナンス」がなければ企業は存続できない

企業におけるガバナンス対策と言えば、かつては「守り」の意味合いが強かった。しかし、昨今はビジネス成長の原動力となる「攻め」の手段へと、その目的が大きく変わりつつあるという。

[伏見学,ITmedia]

特集「なぜ日本企業はガバナンス改革が必要なのか?」:

安倍内閣は成長戦略の1つとして「コーポレートガバナンス(企業統治)改革」を掲げ、法改正など矢継ぎ早にその対策を打ち出している。一気に押し寄せてきたコーポレートガバナンス改革の波に対して、日本企業はどう対応すべきなのだろうか? 課題は何か? 有識者などの声から次の一手を探る。


 コーポレートガバナンス改革で日本企業に“稼ぐ力”を――。こうした政府の大号令が象徴するように、ガバナンスは従来の「守り」から「攻め」の手段へと意味合いが変わってきている。

 この分野の専門家であるアビームコンサルティングの執行役員でプリンシパルの矢野智一氏によると、ガバナンス改革に関しては内部統制が盛んに叫ばれるようになった十数年前から日本企業の重要な経営テーマになっている。

 当時は日本企業のグローバル化が加速する中で、海外拠点をどうやってマネジメントするかが課題であり、そこでガバナンスの重要性が議論されるようになった。例えば、日本の本社で把握している収益数字と、中国の工場から報告される数字が合っていないため調べてみると、そもそも計算方法が違っていて、入っている品目がバラバラだということが散見されたのである。

海外拠点などのガバナンス強化に多くの日本企業が躍起になっている 海外拠点などのガバナンス強化に多くの日本企業が躍起になっている(写真はイメージです)

 「グループ会社や買収した会社が本社の言うことを聞かない、何をやっているか分からないといった課題に対して、改善したい、メスを入れたいという企業からの要望は今なお多いです」(矢野氏)

 その後、企業が成熟するにつれて、ガバナンス改革も攻めのアプローチとして考えられるようになってきた。情報を集約して意思決定をスピード化する、M&A(合併・買収)した企業にいち早く文化を浸透させるなど、ビジネス成長のためのドライバーとしてガバナンス改革を捉えているのだ。

 「ここ最近、機関投資家が『ESG投資』と言い始めています。ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を指し、これがより良い会社に投資していこうという流れがあります。これもガバナンスが守りから攻めに転じている好例でしょう」と矢野氏は説明する。

ガバナンスを利かせるための土台作りを

 ただし肝心なのは、ガバナンスを改革することそれ自体が目的になってはいけないということだ。あくまで何らかの事業課題を解決した結果として、企業にガバナンスが利くようになるのだという。

アビームコンサルティングの執行役員 プリンシパルで、プロセス&テクノロジー ビジネスユニット FMCセンター長を務める矢野智一氏 アビームコンサルティングの執行役員 プリンシパルで、プロセス&テクノロジー ビジネスユニット FMCセンター長を務める矢野智一氏

 「企業にガバナンスが利いているのかどうかは測るのが難しいです。例えば、社外取締役が3人いる会社はガバナンスが強くて、1人しかいない会社は弱い、ということはないはずでしょう」(矢野氏)

 とはいえ、ガバナンスが利いてないような企業は、そもそも事業継続できないという。

 「経営トップの意思決定が有効に働くかどうかはガバナンスによるものです。社長が下した経営判断に社員が誰もついてこないという状況は、ガバナンスがない状態であり、もはや企業の体をなしているとは言えません」(矢野氏)

 ガバナンスとは、サステナブルな経営をする上ではなくてはならないもので、それがないと、極端に言えば収益を伸ばすことも、人材を育成することも難しいのである。

 では、ガバナンス改革の担い手は誰なのか。実際の取り組みは経営企画や財務、経理、IT部門かもしれないが、経営トップの後押しなくしてガバナンス改革は成し得ないという。

 「社長に対してスタッフ部門が『当社はガバナンスが弱いので何とかしましょうよ』という提案はしづらいでしょう。それを考えるのは経営トップの役目であり、スタッフ部門は、例えば、適正な数字を管理できるようにするとか、分析するための情報をそろえておくとかなど、ガバナンスを利かせるための土台を作ることが役割です」(矢野氏)

 つまりガバナンス改革は、経営トップの推進力と、それを支える現場の実行力という両輪によって進んでいくものなのだ。

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