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» 2017年09月25日 06時30分 公開

池田直渡「週刊モータージャーナル」:トヨタGRカンパニーとは何か? (1/4)

トヨタは2016年4月、巨大な組織を7つのカンパニーに分割。その1年後、予想外の部署が新たなカンパニーとして加えられた。それが「GAZOO Racing Company」(GR)だ。

[池田直渡,ITmedia]

 トヨタ自動車は2016年4月、経営の意思決定の速度を向上させるため、巨大な組織を7つのカンパニーに分割した。狙いは身軽な組織による即断即決化だ。トヨタ自身の説明によれば、従来「“ソリューション”で分かれていた組織を“オポチュニティ”で切り分け直す」ことにした。

GAZOO Racing Companyの発足をアピールするべく9車種11モデルの固め打ちでインパクトを狙う。リリースはモデルによって、すでに発売されているものから来春予定までモデルごとに異なる GAZOO Racing Companyの発足をアピールするべく9車種11モデルの固め打ちでインパクトを狙う。リリースはモデルによって、すでに発売されているものから来春予定までモデルごとに異なる

大企業病を打ち破れ!

 トヨタの言い方は分かりにくいので、もう少し具体的に説明しよう。単純化した言い方だが、例えば、1台のクルマを作るとき、普通は、商品企画→設計→生産→販売計画のような流れになる。仮に商品企画に無理があったとき、これがおかしいと気付くチャンスは最悪の場合、販売計画時点であったりする。あるいは、もっと単純に設計が起こした図面が、生産で実現できないことが発覚したりもする。

 実際にはそこまで間抜けなことにはならないまでも、間抜けな事態を予防するにはいちいち上流から下流まで全部のチェックが必要だ。それは膨大な手戻りを呼ぶし、時に妥協やすり合わせで解決しなくてはならないことになる。企業の決定と実行に関するレスポンスを削ぐことになっているのだ。

 仮に、関連する全部署から、少数精鋭を選抜して商品企画の会議に最初から参加させていれば、いちいち完成プランに持っていく前に是正できる。商品企画に設計や生産や販売計画の知恵がリアルタイムで反映できることになる。トヨタが狙うカンパニー制の効果とはこれで、単純な時間短縮だけでなく、製品レベルの向上にまで寄与することを目指している。「阿吽(あうん)」という言葉があるが、巨大化した組織をもう1度「阿吽」で動く組織へと変えていこうというのが狙いだ。

 大まかに言えば、例えば車種に携わるチームを縦串で束ねて、「プリウスチーム」や「クラウンチーム」にするわけだ。前述したように、商品企画チーム、設計チーム、生産チーム、販売計画チームのような横串でやるよりも、部署間の都合に振り回されにくく、1台のクルマにフォーカスしやすくなる。

 さて理念は理念としながら、トヨタはそれを究極のところまで一気には煮詰めない。トヨタの面白いところは現実的なところだ。昨年のカンパニー制の発表内容を見たとき、先進国向けの第1トヨタと新興国向けの第2トヨタが相変わらず残っていることに少し違和感を持った。これは地域別ビジネスユニットという考え方で、どちらかと言えば横串的だ。車種にフォーカスし、そこにエネルギーを集約する形とは少し違う。本来は販売すべてを統合するか、車種ごとに分割して他のカンパニーの部分機能にするかになるはずだ。

 トヨタは縦串に変えるために無理やり理想で塗りつぶさない。できる部分とできない部分に1度切り分け、できない部分にはいったん目をつむる。その上で、準備が進んでから段階的に切り替えていく。17年3月、トヨタは再び組織再編を行い、第1・第2トヨタを束ねて「事業・販売ビジネスユニット」に統合、再編した。

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