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» 2017年10月02日 06時30分 公開

池田直渡「週刊モータージャーナル」:アイサイト 分かりにくい誠実と分かりやすい不誠実 (1/3)

スバルがレヴォーグに「アイサイト・ツーリングアシスト」を搭載。都内で行われた試乗会でこのツーリングアシストをテストした筆者はとても混乱した。それは……。

[池田直渡,ITmedia]

 7月3日、スバルはレヴォーグに「アイサイト・ツーリングアシスト」を搭載することを発表した。

 細かく言えばさまざまな部分がアップグレードされているが、最も大きな話題は、アクセル・ブレーキ・ステアリングのアシストが全車速対応になったことだ。

商品改良を受けアイサイト・ツーリングアシストが搭載されたレヴォーグ 商品改良を受けアイサイト・ツーリングアシストが搭載されたレヴォーグ

自分で運転した方がマシ

 都内で行われた試乗会でこのツーリングアシストをテストした筆者はとても混乱した。一言でいってステアリングアシストの出来が悪い。具体的に問題点を挙げると、大きく3つある。

  • コーナーの曲がり率や横方向加速度によって、途中でアシストを止めてしまう。
  • ドライバーが運転していることの確認のために10秒に1度、ステアリング操作を行わないとランプとアラームで警告される。
  • 車線内での位置取りが悪く、常に左に寄りすぎる。特に左車線に大型トラックがいるとスレスレを走る感じがする。

 要するに怖くて、アシストに任せられないのだ。筆者が基準として考えたのは追尾型のアダプティブクルーズコントロール(ACC)だ。ACCもまた完璧ではないが、苦手とする項目は割とはっきりしていて、人が介入しないとダメな場面が分かりやすい。任せられることと任せられないことが切り分けやすく、任せられる部分での運転負荷の軽減が非常に大きい。

 ところが、ツーリングアシストはそうではない。任せられる、任せられないの分岐が複雑で、それをいちいち判断してシステムのご機嫌を伺うのと、自分の判断で運転することとどちらが楽か分からないほど煩雑なのだ。

 だから筆者はエンジニアに「これじゃプロトタイプ。市販するレベルにない」とまで言ったのだ。

自動車を作る人とそれ以外

 この手のステアリングアシストの先鞭を付けたのはテスラである。しかも彼らはレベル2のこれを「自動運転」だと平気で言う。自動運転だと言いつつも、いざ死亡事故が起きた時に、掌を返して「安全運転の義務はドライバーにある」と公式アナウンスした。

 彼らがオールドエコノミーと揶揄(やゆ)する自動車産業はこれまでそういう誤解を招く大げさな言い方は決してしてこなかった。「ぶつからないブレーキ」にしても初期は「ぶつからない」と言わないでくれと何度もお願いされた。「あれは衝突軽減ブレーキです」。書き手としては簡潔に分かりやすく書けないのでとても面倒だったが、一方でその誠実な姿勢に、自動車産業への信頼を強く感じたのも確かだ。

 今、そういう志の高い自動車の作り手が、テスラが始めた「分かりやすさのワナ」にはまり始めている。日産はコマーシャルで「スイッチ1つで自動運転」と言い始めた。あれを聞くたびに思うのだが、自分の親兄弟や子どもにクルマのキーを託すとき、「このクルマはスイッチ1つで自動運転だよ」と言えるのだろうか?

 身内に言えないことを他人に無責任に言うのは人間としておかしい。相手がクルマのプロならいざ知らず、コマーシャルを見るのは素人だし、そのまま真に受ける人だって大勢いる。分かりやすさばかりを求めた不誠実な説明でミスリードして良いわけがない。そんなわけで筆者は「スバルよ、お前もか」という気持ちで試乗を終えた。

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