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» 2017年10月16日 06時30分 公開

池田直渡「週刊モータージャーナル」:裏切らないスイフト・スポーツ (1/3)

ハンドルを握る前からさぞ楽しいだろうと思ってはいたが、走ってみるとそれを上回る。期待をまったく裏切らない、多くのファンが待ち望んでいたスイフト・スポーツそのものだ。

[池田直渡,ITmedia]

 ハンドルを握る前からさぞ楽しいだろうと思ってはいたが、走ってみるとそれを上回って楽しかった。期待をまったく裏切らない、恐らく多くのファンが待ち望んでいたスイフト・スポーツそのものだ。

新型スイフトのモデル追加でトリを務めるスイフト・スポーツ。イメージカラーはイエロー 新型スイフトのモデル追加でトリを務めるスイフト・スポーツ。イメージカラーはイエロー

 昔からホットハッチと言われるクルマには楽しいものが多かった。スイフト・スポーツはそうしたクルマの最も正統な継承者だと思う。かつて日本を代表するホットハッチとして君臨したホンダ・シビックType Rは450万円と水平線の彼方へ消えてしまった。

 Bセグの競合を見れば、価格の高い順に、トヨタ・ヴィッツGR(230万円)、ホンダ・フィットRS(218万円)、日産・マーチNISMO(160万円)、マツダ・デミオ15MB(153万円)。スイフト・スポーツは素のモデルで183.6万円。セーフティパッケージ全部乗せて198万円である。競合中最安価のデミオはモータースポーツのベースグレードで、装備をはぎ取った特殊グレードなので同列に評価できない(それが良いという特殊な性癖の人は除いて)。ざっくり見て200万円超えのヴィッツとフィット、200万円以下のスイフトとマーチという図である。

 スイフトの主査の小堀昌雄氏に「頑張ったのは分かりますけど、あと20万円安かったらというのがユーザーの偽らざる気持ちだと思います」と無茶なことを言ったら、困り果てていた。いや本当に頑張っているのは分かるし、世界的に見てもむしろ安い。おかしいのは日本のデフレ賃金であって、スズキのせいではない。

 買えるか買えないかは個人の懐事情だが、価格に相当する価値があるかどうかと言えば、肝心のクルマはホットハッチという言葉にときめく人なら、たまらない1台に仕上がっている。買えるのならばすぐにでも判子を持って、ディーラーに行くべきだ。一番言いたいことはそれで、ホントはそれだけで原稿を終えても良いと思う。でも長文が大好きという奇特な人に向けて以下の文章を書いていこう。

1トンを切るということ

 ここしばらくのスズキは、目覚ましい軽量化技術で新型車をリリースし続けている。スズキが「HEARTECT(ハーテクト)」と名付けた新世代シャシーだ。2016年12月にデビューした新型スイフトは、その軽量化で世間をあっと言わせた。先代スイフトXG(2WD/5MT)と新型スイフトXG(2WD/ 5MT)を比較すると何と120キロも軽い840キロ。これが大きく重いクルマならともかく、Bセグメントのコンパクトなのだからどうかしている。今までだってグラム単位で軽量化にまい進してきた。それをいきなり120キロである。

 「スズキがスイフトを120キロ軽量化しましたよ」と伝えたら、トヨタの偉い人もマツダの偉い人も絶句していた。「ちょっと研究します」。そりゃそうだと思う。スイフト以外のBセグメントのクルマで最軽量は日産マーチの940キロ。スイフトの場合、重量で不利なストロング・ハイブリッドでマーチと同じ940キロを叩き出している。とにかく軽量化技術に関して、現在スズキは世界的にも飛び抜けており、競合各社はそれをマークしなければウソだと思う。

 そんなわけで、「スイフトは軽い」と思っていたので、970キロという車両重量を聞いたとき、「あれっ? 意外に重いな」と思った。前出の最軽量モデルであるXGの5MTが840キロ、ストロングハイブリッドのHYBRID SGで940キロ。だから「スイフト・スポーツは930キロくらいで仕上げてくるかな?」と思っていた。前出の小堀氏は「重量増加の要因はほとんどがエンジンとサスペンションです」と言う。大径化されたタイヤ/ホイールと強化されたアーム類もさることながら、やはり140馬力の高出力のためにインタークーラーターボ化され、各部が強化されたエンジンが増加要因となっているのだと言う。ならば仕方ない。

全体最適化と高張力鋼板の採用拡大で先代モデルから大幅な軽量化を遂げたスズキの新しいシャシーアーキテクチャー、ハーテクト 全体最適化と高張力鋼板の採用拡大で先代モデルから大幅な軽量化を遂げたスズキの新しいシャシーアーキテクチャー、ハーテクト

 車両重量はもちろん軽いに越したことはないが、過去のさまざまなクルマを思い出して見ても、経験的には1トンはやはり大きな分水嶺で、1トンを切ると途端にクルマの動きが良くなり、サーキットの限界走行で姿勢を崩しても対処がし易い。そのラインを守り切ったことには大きな意義がある。煮え切らないことを散々書いたが、それはスイフト・スポーツに対する期待の表れで、1トンを切りながらシャシーはがっちりしているし、出来上がったクルマはとても良い。

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