2010年代後半に、自動車メーカーが成長をするためにはどんな「エンジン」が必要なのだろうか? 文字通り成長エンジンになる「エンジン」、いやそれは内燃機関ではなく「モーター」かもしれないが、どんな武器を持ったメーカーが有利なのかはここに来てはっきりしてきた。
キーになるのは世界各国の経済成長だ。この50年を振り返ると、大まかに言って3つの時代に分けることができる。それは北米の時代、東欧の時代、アジアの時代である。
自動車の世界では、1990年までは北米の時代だった。北米マーケットにいかに食い込むかが自動車メーカーの成長を決める唯一と言ってもいい要因だった。
日本の自動車メーカーにとってラッキーだったのは、北米進出のタイミングが良かったことだ。1980年代に日米自動車摩擦が勃発し、輸出規制が課せられたため、日本の各メーカーは北米に工場を建設し、輸入車ではなく米国生産車としてクルマを売ることに成功する。この影響で大きく成長したのがホンダだ。トヨタと日産も比較的上手くやった。現地工場化によって、北米販売を一時的なマーケットではなく、恒常的なマーケットとして確保することに成功したのだ。日本の自動車メーカーにとって、北米マーケットで一定のシェアを占め続けることは、グローバルマーケットで戦うための、台数的、経済的な基礎体力になっていくのである。
ただし、1つ留意しなくてはならないのは、北米は自動車に対する嗜好がだいぶ特殊なドメスティックマーケットだということだ。車名別販売台数のトップにピックアップトラックが顔を出したり、世界の主流であるCセグメントが日本で言う軽自動車のような扱いを受けていたりする。燃料価格が安く、国土が広い北米は自動車にとってとてもガラパゴス化しやすい環境なのだ。
上手くいった北米と比べて、日本メーカーの欧州マーケットへの進出は一筋縄ではいかなかった。それは一方的な話ではなく双方的な現象でもある。日本のメーカーが欧州への輸出を北米の様に伸ばせなかったのと同じく、北米メーカーも欧州への進出を成功させることができなかった。その逆も真で、欧州メーカーもまた北米への進出に失敗する。欧州と日米の間には巨大な壁が存在したのである。
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