激戦の「音声対話」、ドコモが進める独自戦略とは「Google Home」は扱わない

» 2017年10月20日 06時30分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

「NTTドコモが他社製スマートスピーカーを販売する予定は今のところない」「独自の音声対話技術の開発に注力していく」――同社サービスイノベーション部の担当者は、10月18日開いた新端末発表会でこう話した。

photo 「AIエージェント」に関する方針を発表する、ドコモの吉澤和弘社長

 KDDIが10月に米Googleのスマートスピーカー「Google Home」「Google Home Mini」を発売すると発表したが、ドコモはこうした流れには追随せず、あくまで自社端末に搭載予定の対話サービスを磨いていく方針だ。

photo 米Googleの「Google Home」=ニュースリリースより

 ドコモが開発を進めるのは「AIエージェント」。NTTグループのAI(人工知能)基盤「corevo」の一部である「先読みエンジン」「多目的対話エンジン」「IoTアクセス制御エンジン」――を搭載し、ユーザーの行動履歴をもとに行動パターンを予測する機能、スムーズな対話機能、音声でIoT(モノのインターネット)機器を操作できる機能──などを持たせる予定だ。

 18年春の実用化を目指す。16〜17年冬春モデルから端末に搭載している音声でのユーザーサポートサービス「しゃべってコンシェル」と同様、待ち受け状態でも起動する仕様になるという。

 発表会で公開されたイメージ映像では、スマホが通常よりも早いタイミングでアラームを鳴らしてユーザーを起こし、「雨なので30分早く起こしました。いつもは自転車でしたが、今日は徒歩ですよね」――と話しかける様子が披露された。

photo 「AIエージェント」の利用イメージ=ニュースリリースより

 このほか、ユーザーが音声で指示することで、希望する食材などをEC(インターネット通販)で購入して自宅に届けるサービスや、旅行で行きたい施設を予約し、旅先の天気やおすすめスポットなどの情報を提供するサービスにも対応する予定。ECでの購買は、ドコモのポイントサービス「dポイント」などとの連携も視野に入れている。

 ドコモは今後、AIエージェントの実用化を段階的に進めていく方針だ。まず10月下旬から、しゃべってコンシェルの機能を拡充。音声で呼びかけることで、音楽聞き放題サービス「dヒッツ」やラジオアプリ「radiko.jp」を起動できるサービスを始める。端末に「おすすめの曲をかけて」「ラジオが聞きたい」――と話しかけると、自動で音楽や番組を流すことが可能になる。

 11月下旬にはグルメサイト「dグルメ」、家事サポートサービス「dリビング」の一部を音声で利用できるアプリ「おしゃべり」をリリースする。「レシピ見せて」「伝言おねがい」――などと端末に話しかけると、自動でレシピを表示したり、留守番中の家族に伝言を届けることができる。

photo サービスのイメージ=ニュースリリースより

 ドコモの担当者は「今秋開始するサービスを通して、ユーザーとAIの対話記録を収集し、対話の質を向上させたい」(同)と説明。「Google Homeは『Googleアシスタント』を搭載しており、展開しても当社サービスの進化につながらないため、現時点では手掛けないと判断した」という。

 サービスの利便性を高めるため、スマホやタブレットと連携し、離れた場所からでも音声操作を可能にする機器「ドコモ シンプルマイク01」(価格未定)も18年1月以降に発売する。

photo 「ドコモ シンプルマイク01」=ニュースリリースより

 6月から進めている、対話に関する技術群を公開してAIエージェントを他社と共同開発する取り組み「ドコモAIエージェント・オープンパートナーイニシアティブ」にも引き続き注力する。

photo 取り組みの概要=ニュースリリースより

 ドコモの吉澤和弘社長は「他社との連携を強化した上で、AIエージェントを確かなサービスにしていきたい。パートナー企業の募集も引き続き行っており、現在は20社以上と協議している」と状況を説明。「ゆくゆくは、待ち受け状態での発話機能がない機種や、端末がより遠くにあるケースでも対応できるよう、技術の発展に努めていきたい」と話している。

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