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» 2017年10月21日 07時00分 公開

宇宙ビジネスの新潮流:火星まで一気に100人送り込むSpaceXの新型ロケットとは? (1/2)

宇宙ビジネスの世界で次々とイノベーションを起こす男、米SpaceXのイーロン・マスク氏が新たな野望をぶち上げた。

[石田真康(A.T. カーニー),ITmedia]

 9月末、オーストラリアのアデレードで行われた国際宇宙会議(IAC)において、米SpaceXのイーロン・マスク氏が新たな野望をぶち上げた。そのビジョンの核となるのは、火星へ1度に100人を送り込むことができ、さらに地球上のあらゆる地点に1時間以内に飛行可能とする大型ロケット「BFR」だ。

米SpaceXのイーロン・マスク氏は人類の火星移住を唱える(出典:SpaceX) 米SpaceXのイーロン・マスク氏は人類の火星移住を唱える(出典:SpaceX

大型輸送システム「BFR」

 IACは世界的に有名な宇宙カンファレンスで、ここ2年はSpaceXのマスク氏が基調講演を行っており、その発言が注目されてきた。SpaceXが将来的な人類の火星移住を目指して大型輸送システムのITS(Interplanetary Transport System)を開発してきたことは周知の事実であるが、開発コンセプトを見直し、今年はBFR(Big Falcon Rocket)という新たな輸送システムを掲げたのである。

 BFRは、SpaceXが開発を進めてきたロケットエンジン「ラプター」が31機搭載される第1段ブースターと宇宙船で構成され、全体で106メートルの長さになる。宇宙船だけでも長さは48メートル、直径9メートル という超大型ロケットだ。ラプターエンジンはこの1年間で40回以上の燃焼実験が行われている。

 BFRには8階分の居住区画があり、40の客室を備える。その収容力はエアバスA380の客室よりも大きく、火星飛行の場合には100人程度を同時輸送可能という。さらに第1段ブースターおよび宇宙船ともに、現在運用している大型ロケット「ファルコン9」や補給船「ドラゴン」と同様に、打ち上げ後の着陸、回収、再利用を念頭に置いて開発されているのだ。

 2022年には火星に向けて2機の無人飛行が行われ、24年には搭乗員を乗せた有人飛行を行う計画だ。SpaceXでは将来的に火星に存在する水および二酸化炭素を用いて、ロケット推進剤を現地生産するための工場建設を目指しており、そのための基礎調査を行うことが目的とされている。

世界のあらゆる地点まで1時間以内に飛行

 驚くべきことにBFRは単に火星輸送専用システムではないのだ。マスク氏によると、SpaceXでは現在大型商業衛星の打ち上げサービスで活躍中のファルコン9などに代わり、将来はBFRに一本化していくという。同ロケットでは地球低軌道に最大250トンを打ち上げられるため、大型衛星を複数同時に打ち上げたり、小型衛星であれば数十機から数百機をまとめて打ち上げたりすることができるという。

 前回の記事では、ロケットを活用して素材や部品を宇宙に輸送し、その後ロボットが宇宙空間において大型構造物を組み上げる技術を紹介したが、BFRはある意味で逆の発想で、大質量の巨大衛星や体積が大きい宇宙望遠鏡など大型の宇宙構造物をそのまま輸送することも視野に入れて開発されているという。こうした大型構造物を構築するための経済性や効率性の考え方には業界でもいろいろな見方があるのが現状だ。

 宇宙への輸送だけではない。さらにマスク氏はBFRを飛行機のように活用して、地球上なら世界のどこへでも1時間以内で飛ぶための輸送システムとして活用することも発表した。具体的には香港から シンガポールが22分、東京とシンガポールが28分、ロサンゼルスとニューヨークが25分などであり、会場からも驚きの声が上がったという。

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