原発虚偽報告問題がもちあがった日立も同様である。日本の原発は戦後日本が手掛けた最初の巨大科学技術であり、官民協力のナショナルプロジェクト第1号だった。日本という国の威信がかかっていたので、「世界一」を目指すのは当然であり、日立や東芝はそのための「ノルマ」をこなすのが義務だった。
そんな苦労があってご存じのように「日本の原発は世界一」という名声を得るようになったのだが、そこからがいけなかった。
いたるところで「世界一」自慢を繰り返したのだ。1982年10月25日の『読売新聞』に出された電気事業連合会の広告には、その慢心ぶりがよくあらわれている。
「世界一の技術が日本の原子力発電所を支えています」
「世界の規範となっているわが国の原子力発電所」
この広告が世に出て、日本人が「そうかオレたちってすげーんだ」とうっとりしていたまさにその時、先ほどの日立の虚偽報告は始まっている。「世界一の技術」という結論がなによりも優先されていたので、その帳尻を合わせるために現場ではさまざまな苦労がなされていて、それが「データの改ざん」につながった恐れがあるのだ。
「オレってすごいんだぜ!」「オレってカッコイイ!」と周囲に触れまわる人が「勘違い男」と呼ばれことからも分かるように、行き過ぎた「自画自賛」は人間から客観性と冷静さを奪う。
これを「法人」にあてはめるとどうなるかというと、「こんないい加減なことをしたら世間からどう見られるだろう」という客観性がスコーンとどこかへ飛んでいってしまい、善悪を冷静に判断できない「法人」になる。それはすなわち、「不祥事企業」である。
だが、このように恐ろしい「自画自賛」がいまの日本社会にはあふれている。
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