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» 2017年12月12日 06時30分 公開

地元が最優先:「東京も海外も同じ」 ベアレンのビールが岩手に密着する理由 (1/5)

2001年、盛岡市で創業したクラフトビールメーカーのベアレン醸造所。同社は地域密着を掲げ、地元の人たちに愛されるビール造りを心掛けている。なぜそのことに徹底的にこだわるのか。創業メンバーの1人である専務の嶌田洋一さんに聞いた。

[伏見学,ITmedia]

 「岩手に移住してから16年ほど経ちます。生活上のストレスはほとんどないですよ。強いて言えば冬が寒いのと、酔った帰り道に凍った道路で滑ってしまうことくらいですかね」と嶌田(しまだ)洋一さんは笑う。

 嶌田さんは盛岡市にあるクラフトビールメーカー、ベアレン醸造所の専務であり、創業メンバーの1人だ。

2001年創業のベアレン醸造所。岩手を代表するクラフトビール会社として地元の人たちに愛されるビール造りを常に心掛けている 2001年創業のベアレン醸造所。岩手を代表するクラフトビール会社として地元の人たちに愛されるビール造りを常に心掛けている

 新卒で入った協和発酵工業(当時)のときに支社で働いた4年間と合わせて、もうトータルで20年以上も盛岡で暮らしている。盛岡について、住民の人柄も良く、のんびりした雰囲気で過ごしやすい街であり、じっくりと腰を据えてビール造りをする上でも最適な環境だという。嶌田さんは東京出身だが、人が多くてゴチャゴチャとした街が好きではないので、今でも東京へ行くとつい逃げるように早足になってしまうそうだ。

 ベアレンは2001年に設立。日本では1994年に酒税法が改正され、ビールの製造免許取得に必要な最低生産量が従来の年間2000キロリットルから60キロリットルにまで引き下げられた。これによって全国各地で地ビールを造るメーカーが生まれた。ピーク時には300を超える醸造所があったが、わずか数年でブームは去る。その後にベアレンは生まれたのである。

 現在、クラフトビールを造る会社の多くは地ビールブームのときにできている。00年代に入り、小規模なパブブルワリーなども増えてはいるが、ベアレンのようにある程度の規模の醸造施設を持つような会社の創業は珍しいという。

 「後発ということもあるし、ほかとは交わらない。自分たちのやり方でやる」という反骨精神がベアレンにはあるようで、情報交換など同業他社との交流はほぼないという。クラフトビールのコンテストに出たことはないし、ビアフェスにも今ではまったく出展していない。

 孤高の会社と思うかもしれないが、クラフトビール業界内でのつながりは持たない一方で、地元の企業や自治体などとの関係性は強めている。日本酒など他の酒造メーカーとの交流もある。地域を盛り上げることが共通目的だからだ。岩手県内の各地で積極的にビール祭りも行っている。

ベアレンの本社。駐車スペースにビールジョッキが描かれていて、遊び心がある ベアレンの本社。駐車スペースにビールジョッキが描かれていて、遊び心がある

 嶌田さんは言う。

 「ベアレンが一番大切にしているのは地域密着。地域性というバックボーンがクラフトビールにとっては大事だと思っています。地域性というのは、当初の地ビールに見られたその町の特産品を原料に使っていたり、観光名所の名前が付いたお土産品のようなものだったりではなくて、そこで暮らしている人たちの本当の生活の中にある文化みたいなものです」

 実際、ビールは地域性が生まれやすいお酒だと感じている。低アルコールで気軽に飲めるし、とりわけ工場で出来たてのビールはおいしいからだ。また、地元のさまざまな食材とも組み合わせやすい。地産地消こそ最も価値が出ると考える。ベアレンのビールもますます地域性にこだわっていくと嶌田さんは力を込める。

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