パートにも退職金 「時間制正社員」で介護職員の離職防止へ正社員と同じ待遇を

» 2017年12月14日 16時52分 公開
[鈴木亮平ITmedia]

 政府は介護報酬(介護保険サービスの公定価格)を、2018年度の介護報酬改定で0.5%ほど引き上げる方向で調整している。プラス改定は6年ぶり。深刻化する人手不足に対応する狙いだ。

 しかし、いわゆる「2025年問題」(団塊世代の全ての人が後期高齢者になることから、介護職員が約38万人不足する問題)を乗り越えていくためには、行政による施策だけでなく、介護事業者側の職員に対する処遇改善も強く求められる。

 施設介護・在宅介護サービスを展開するパナソニック エイジフリーはこのほど、時給制で勤務時間を選べる「時間制正社員制度」を18年4月から導入すると発表した。対象は介護職員。時間当たりの賃金は月給制の正社員と同水準で、退職金も支給するという(週20時間以上の勤務が条件)。

 有期雇用のパート職員は1年以上勤務すれば、無期雇用の時間制正社員を選択できる。時間制正社員のメリットは、育児や介護などのさまざまな事情でフルタイムで働くことができない職員でも、働く時間を自由に調整しながら正社員と同じ福利厚生を受けることができる点だ。

photo 1年以上勤務すれば、無期雇用の時間制正社員を選択できる
photo 正社員と同じように退職金ももらえる

 同社で働く介護職員(約3000人)のうち、約半数はパート社員だ。パート職員の定着率向上が課題だったという。

 「正社員と比べると、パート社員の定着率は低い。人材確保のためにもパート社員の働く環境を改善する必要があった。パートから時間制正社員になることで年収は1.2倍ほど上がる。また正社員と同じように長期休暇などの福利厚生を受けられる」(パナソニック エイジフリー)

 時間制正社員の場合は、管理職に昇進することが原則できないようだが、「育児などで忙しいときは時間制正社員として働き、私生活が落ち着いたときに正社員に戻るというキャリアプランも組める」(同社)としている。

 正社員が時間制正社員を選択することもでき、これまでの経験や能力に応じた処遇を行うとしている。「ベテランの職員が親の介護などで退職してしまうことを防ぐ狙いがある」(同社)という。

photo パートの待遇改善で定着率向上を目指す

 人手不足の問題を解決するためには、人材へ“投資”が必要だ。同社の取り組みが成功モデルとして他の事業者にも広がっていくのか、注視していきたい。

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