トヨタとパナソニックの提携 ハイブリッドの未来池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/3 ページ)

» 2017年12月18日 06時30分 公開
[池田直渡ITmedia]

 12月13日、トヨタ自動車は緊急記者会見を開き、パナソニックとの車載用角形電池事業の協業検討開始を発表した。

 トヨタの豊田章男社長は記者会見で以下のように発言した。

調印に臨むトヨタ自動車株式会社の豊田章男社長とパナソニック株式会社の津賀一宏社長 調印に臨むトヨタ自動車株式会社の豊田章男社長とパナソニック株式会社の津賀一宏社長

 「現在、私どもが直面しております温暖化や大気汚染、資源・エネルギー問題といった地球規模での課題を解決していくためには、電動車をより一層、普及させることが必要となってまいります。

 そのためにも、電動車の重要な基幹部品である車載用電池について、性能・価格・安全性などの面での更なる進化と安定供給能力の確保が喫緊の課題と言えます。

 こうした認識のもと、両社は、車載用角形リチウム、全固体など次世代電池の取り組みに加え、その電池の資源調達やリユース・リサイクルなども含めて、幅広く、具体的な協業の内容を検討してまいります」

混乱の元である「電動車」とは何か?

 少々補足しよう。ここで言う「電動車」は何も電気自動車(EV)に限らない。諸所で誤解と混乱を引き起こしている言葉だが、電動車が指すのはEVだけではなく、プリウスなどのストロングハイブリッド(HV)もあればプリウスPHV(PHV)のようなプラグインハイブリッドもある。あるいは、スズキのSエネチャージのようなマイルドハイブリッド(MHV)も含まれる。要するに、モーターオンリー動力に限らず、エンジンと協働するモーター動力を持っていればそれが補助的なものであろうとも電動車である。より正確に言えばモーター単体で走行する能力を持つクルマを指す場合、本来ストロングハイブリッドと言うが、ハイブリッドの代表となったプリウスがストロングハイブリッドだったため、断りなくハイブリッドと言う場合はストロングハイブリッドを指す。逆にモーター単体では走れず、あくまでもエンジンの補助に徹するタイプをマイルドハイブリッドと言う。

 既に欧州系の数社が、2〜3年以内に「すべてのモデルを電動化する」という発表をしており、「エンジンの生産中止」と誤解するケースも多々見られるが、これは前述の通り、HV、PHV、MHVを含む見通しであり、実際「2019年にエンジンの生産中止」と市場に受け止められたボルボの内部予測を聞いてみると「生産台数の8割はマイルドハイブリッド」というのが実情である。

 トヨタによれば、2030年ごろの見通しでは、HVとPHVが450万台(言及はないが恐らくMHVも含むだろう)。EVが100万台であり、年産1000万台のトヨタの場合、これでようやく過半に達する。「電動車」の累計生産でも、年次の生産台数でも、他を大きく引き離してリードしているトヨタでそうだとすると、自動車全体で見てEVが半数に達するのは驚異的な伸びを見せても40年以降と考えるのが順当だろう。

化学反応から電気を得るバッテリーの場合、温度管理は極めて重要。冷間時にはヒーターで温め、加熱時には冷却する。バッテリーだけではなく、ECUもモーターも冷却が必要だ 化学反応から電気を得るバッテリーの場合、温度管理は極めて重要。冷間時にはヒーターで温め、加熱時には冷却する。バッテリーだけではなく、ECUもモーターも冷却が必要だ

 しかし、切実な問題として、HVだろうがPHVだろうがEVだろうが、従来の補機用バッテリーより大容量のバッテリーを必要とする。トヨタだけでも合計で550万台に達する上、他メーカーでも概ね同様の流れになるとすれば、バッテリーの需要のひっ迫は免れない。しかも、性能・価格・安全性の面でも十分とは言えないバッテリーの能力向上も重大な課題である。

 世界中の自動車メーカーはこれから性能向上の競争だけでなく、壮絶なバッテリーの争奪戦に突入することになるだろう。性能向上(技術力)と安定供給能力(生産能力)の両面を重視するなら、現状で最も安定感があるサプライヤーはパナソニックということになる。

 トヨタとパナソニックはバッテリー領域だけでも既に20年にわたるパートナー関係であり、サプライヤーとしては、1953年の車載ラジオのノイズ防止技術から取引が始まった長い付き合いがある。

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