日本のキャッシュレス化を考える進展はいかに?(1/3 ページ)

» 2017年12月28日 07時00分 公開
[福本勇樹ニッセイ基礎研究所]
ニッセイ基礎研究所

 2017年5月に日本政府は「Fintechビジョンについて」の中で、「キャッシュレス決済比率」を民間消費支出に占めるクレジットカード、デビットカード、電子マネーによる決済の割合と定義した。

 翌6月に閣議決定された「未来投資戦略 2017 −Society 5.0の実現に向けた改革−」では、今後10年間(27年6月まで)にキャッシュレス決済比率を4割程度とすることを目指すとしている。

 本稿では、3回に分けて日本のキャッシュレス化の進展状況と今後の課題について整理してみたい。

日本人は現金を好むと言われるが…… 日本人は現金を好むと言われるが……

16年の日本のキャッシュレス決済比率は23.6%

 一般的に日本人は現金決済を好む傾向があると指摘されることが多いが、16年の現金決済の割合は約49%で、個人消費の半分以上が現金を用いない方法で行われるようになっている(図表1)

図表1 日本の個人消費における決済手段の割合の推移 図表1 日本の個人消費における決済手段の割合の推移

 11年との比較で見ると、現金決済の割合が7%減少しているが、この背景としてクレジットカード(+4.6%)、プリペイド・電子マネー(+4.3%)、ペイジー(+2.7%)の利用が増えたことが寄与している。キャッシュレス決済(クレジットカード、デビットカード、電子マネー)に着目すると、クレジットカードと電子マネーの利用が一般的で、デビットカードがほとんど利用されていないのが特徴的である。

 キャッシュレス決済比率は過去5年間で14.5%から23.5%へ拡大しており、徐々に日本においてキャッシュレス化が進んでいる状況にある。

 日本のキャッシュレス化の進展状況について海外のデータと比較してみよう。図表2は、15年の民間消費におけるカード決済(クレジットカードとデビットカード)の割合を示したものである。図表2における国々をサンプルとした場合、平均的に約40%である。日本におけるカード決済の割合は17%程度であり、世界的に見ると日本はまだ「キャッシュレス化」が進んでいない状況にあると言える。

 日本銀行の調査(※1)では、日本における電子マネー決済の占める割合が世界と比較して高いことが指摘されているが、電子マネーを加えたキャッシュレス決済比率と比較しても、図表2のカード決済の平均値よりも低い。

図表2 民間消費に占めるカード決済の割合(15年度) 図表2 民間消費に占めるカード決済の割合(15年度)

※1 「BIS 決済統計からみた日本のリテール・大口資金決済システムの特徴」(決済システムレポート別冊シリーズ、日本銀行決済機構局、17年2月)

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