インタビュー
» 2017年12月28日 11時00分 公開

「けもフレ」「中国」「Netflix」……:2017年のアニメ業界を6つの“事件”で振り返る (1/2)

アニメ業界にとって“激動の1年”だった2017年。アニメ業界はどう変化しているのか? アニメーション評論家の藤津亮太さんに聞く。

[青柳美帆子,ITmedia]

 日本の一大産業である「アニメ」。今年も300本超のアニメが制作され、大ヒット作が人々の話題をさらった。その一方で、放送延期や人手不足の問題など、制作現場の過酷さも浮き彫りになった。さらにビジネス面では、米国の動画配信大手Netflix(ネットフリックス)のオリジナルアニメへの投資という大きな“波”もあった。

 アニメ業界にとって激動の1年だった17年。アニメーション評論家の藤津亮太さんは、今年の注目ポイントとして(1)アニメ関連市場の2兆円突破、(2)「けものフレンズ」予想外の大ヒット、(3)ソーシャルゲームの存在感、(4)中国資本アニメの登場、(5)Netflixの「独自コンテンツ強化」、(6)アニメ業界の働き方改革――を挙げる。

 「君の名は。」に沸いた16年から1年、アニメの世界はどのように変わったのか? 藤津さんに振り返ってもらった。


アニメ関連市場の2兆円突破

 日本動画協会刊行の「アニメ産業レポート2017」によると、16年の広義のアニメ関連市場は2兆9億円と、初めて2兆円の大台に乗りました。ただし注意しなければならないのは「広義の」とは、ライブ会社、アニメキャラグッズ会社、パチンコメーカーなども含めて2兆円になるということ。アニメ業界だけを見ると、2300億円と前年比15%増ではあるもののそこまで大きくはありません。映像配信分野は伸びているものの、DVDやBlu-rayソフトのパッケージ販売は落ちていて、全体の半分にあたる「深夜アニメ」のマネタイズは難しくなってきています。

 2兆円という数字を素直に喜べないのは、キャラクターグッズは求められていて、ユーザーがアニメ関連コンテンツに支払っているお金は伸びているのに、アニメを作る状況は変わっていないから。現場から見ると「それだけ伸びている実感がない」という声も上がっています。

「けものフレンズ」予想外の大ヒット

 アニメの制作は、企画から放送まで2〜3年と非常に時間がかかります。人気制作会社は数年先まで予定が生まっていて、17年時点で20年放送予定の企画も動いている状態。大作志向の作品であれば、もっと制作期間や予算もかかる。しかし時間やお金をかけて準備しても、ヒットするアニメができるとは限りません。当たらなかった際のリスクを分散するために、数社で出資する「製作委員会」方式が日本では一般的になっています。

 そんな中、17年のダークホースとなったのが「けものフレンズ」。関係者の期待は大きくはありませんでしたが、人気が爆発し大ヒット作品に。そこまで大きく出資をしていなかったであろう作品がヒットすると、「アニメに出資する意味はある。もう少しアニメにお金を出してみよう」という周囲の期待が生まれ、業界に資金が流れてきます。「けもフレ」は続編で監督が交代することが決まるなど、明るいニュースばかりではないのですが……非常に大きな意味のある作品です。

ダークホースとなった「けものフレンズ」。さまざまな企業とのコラボ展開もあった(=公式サイト)

 同様の流れは、16年の「君の名は。」でもありましたね。興行収入250億円突破という大きな記録を打ち立てた作品が生まれたことで、アニメ映画への期待や資金が集まっています。企画として立ち現れるのは18〜19年ごろになるかと思いますが、要注目です。

ソーシャルゲームの存在感

 ソーシャルゲームのアニメ化の存在感が増しています。特に女性向けや乙女向けと言われるジャンルが元気で、「活撃 刀剣乱舞」「イケメン戦国 時をかけるが恋ははじまらない」「アイドルマスター SideM」「戦刻ナイトブラッド」などが放送されました。

 アニメ展開といえばメディアミックスの頂点で、作品が次のステップに進むための強力なブースターと捉えられていました。ですが、ソーシャルゲームのアニメの中には、新規獲得のためというよりは「既にゲームに一定数いるファンに長く愛されるため」「一度遊んでいたけど離れてしまったユーザーを呼び戻すため」にアニメを作る――ゲームの援護射撃のためにアニメ化しているものも少なくない印象があります。

 さて、ここでポイントになるのは、「なぜソーシャルゲームのアニメが増えているのか?」です。理由は非常にシンプルで、ソシャゲ業界に予算があるから。1つのゲームでユーザー獲得や宣伝費用に使える予算は、ユーザー数が多ければ多いほど大きく、数億〜十数億円ほどに上ります。アニメの制作費用は数億円なので、「ユーザー満足やリテンション(関係維持)の予算でアニメを作る」という発想で企画が動いていると考えられます。

 ちなみに、そういった作品の特徴として、「ストーリーや世界観よりも、キャラクターの魅力ややりとりを見せる」という方向への進化が挙げられます。16年放送の「刀剣乱舞-花丸-」はその嚆矢。ゲーム「刀剣乱舞」のシリアスな世界観はあえて強調せず、キャラクターたちのほのぼのとした日常を描き、ファンから大きな支持を得ました。「ストーリーを見たい」というファンに対しては、ストーリーのシリアスさを押し出した別アニメ「活撃 刀剣乱舞」を放送し、ファンの矛盾した欲望に応えるアニメ展開を果たしました。ドラマもキャラも……と苦心した先行作とは異なる受け入れられ方をしましたね。

日常を描いた「花丸」、シリアスな「活撃」と、2つのアニメでゲーム「刀剣乱舞」の世界観を表現した
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