2018年新春特集 奮い立て! 地方の変革者たち

なぜ人口3万人の田舎に全国から起業家が集まるのか地方創生の若手リーダー(3/3 ページ)

» 2018年01月11日 06時00分 公開
[鈴木亮平ITmedia]
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流動人口を増やすことがカギ

 4つ目は、NCLに集まった起業家たちのコミュニティー形成。遠野に集まった15人の起業家たちのプロジェクトはそれぞれ異なるが、NCLメンバーとして定期的に交流できる環境が作られている。そこで、お互いの進捗を共有し合い、手伝えることがあれば他のメンバーのプロジェクトにも関わっていくのだ。

photo お互いの進捗を共有し合うNCLメンバー

 林氏はこのコミュニティーこそが起業家を地方に集める上で最も重要なポイントだと説明する。

 「地方で新しいことを始めようとする人たちが重要視しているのは『誰と何をするか』であり、仲間(コミュニティー)が欲しいと思っています。一緒に船をこいでいける仲間がいることをNCLが提供することで、不安を解消し、移住や参加のハードルを下げています」

 「また地方に1人で乗り込むと、その文化に順応してしまい、いつの間にか“原住民化”してしまうんですよ。それで結局改革ができない。摩擦を起こすためにも起業家を支える仲間が必要なのです」

 このNCLの構想段階から、いち早く参加を表明したのが遠野だったという。遠野では、83人の起業家(候補)からエントリーがあった。その中から選抜された15人が遠野に移住し、活動している。この他に、前述したように現在は8つの地域でNCLが横展開されている。

 遠野のメンバーだけでなく、他の地域で活動するNCLメンバーとも活発に交流できるようにしていくという。その理由について林氏は「日本全体で人口が減っている中で、定住人口の取り合い、働き手の取り合いをしても意味がありません。大切なのは“流動的な人口”を増やしていくことだからです」と語る。

 「二拠点生活でもいいし、数年ごとに住む場所を変えてもいい。定住前提でものを考えず、流動的になった方が交流が生まれ、新たな価値が生まれやすくなる。いかにこの偶発性を高めていくかが重要です」

photo 遠野駅。集まったNCLメンバーのほとんどが遠野と縁もゆかりもない人だという

複数のコミュニティーを持つ社会へ

 林氏は2020年までに100以上の地域にNCLを横展開し、1000人の起業家創出を計画している。その先で目指すのは「複数のコミュニティーで生きていける社会の実現」だという。

 「そもそも、所属するコミュニティーが少なかったり、または選べないという状況は不幸だと思います。まずは全国のNCLメンバー同士が緩くつながっていけるような仕組みをこれから作っていきたいと思っております。これが前例となって、複数のコミュニティー(地域)で働く、生活していくような社会の流れを作っていきたいですね。そうすれば、たとえ、定住人口が増えなくても地方に人やお金が流れていくようになるでしょう」

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